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4月 町田市

フデリンドウ   筆竜胆    リンドウ科

コオニタビラコの咲く休耕田を歩いてゆくと、
ちょっとした山道に出る。

小高い丘の尾根筋には昔の街道が走っている。
鎌倉古道だ。
かつて北面の武士たちが駆け抜けた道は、
深い草に覆われながら
かすかにその面影を残している。

薄青いフデリンドウの花を見つけたのは、
丘のふもとをなぞる道沿いの崖だった。

リンドウといえば秋の花だが、
本種フデリンドウやハルリンドウは
春の野山にその花を開く。

開花の時期は違いこそすれ、
これらはすべて同じリンドウ科リンドウ属の仲間である。

リンドウは竜胆と書く。
乾燥させた根は漢方薬になり、驚くほど苦い。
一般に動物の胆は苦いが、
竜の胆ならばさもあろう。


写真をみると、花茎が短く
葉も目立たないことから
青いフクジュソウのような印象を受ける。

しかし実際には
フクジュソウのように目を引く花ではない。
高さは5〜10センチ、
開いた花の直径は2、3センチといったところか。
つぼみの形を毛筆に見立て、
フデリンドウの名で呼ばれている。
ハルリンドウやコケリンドウもよく似た感じだが、
これらは根元の方に
ロゼット状の根生葉があるので区別ができる。


なだらかな崖には
寒い季節の名残の落葉が敷き詰められていた。
冬枯れを思わせる眺めの一角に、
そこだけ色を置いたように小さな花は咲いていた。

斜面に身を屈めて写真を撮っていると、
春の気配を感じ取ってか
一匹のはなばちが吸蜜に訪れた。

こうやってフレームで切り取ってみると、
何だかブローチや髪飾りのようでもある。
爽やかな青紫と葉の緑に加え、
処々に滲む紅の色が美しい。

あるいは絵具を含ませた筆であったのかもしれない。
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4月 町田市

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