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10月 あきるの市

ゲンノショウコ   現の証拠      フウロソウ科


林縁の明るい道端に、
鮮やかな紅色の花が咲いていた。
ゲンノショウコの紅花である。

私が普段見慣れているのは下に示した白花で、
ほんのりとした薄紅色のものがこれに次ぐ。
左の花のような深いマゼンタは初めてだったので、
少々驚き、かつ怪しんだ。

ことによるとゲンノショウコに見せかけた、
怪しげな園芸種のたぐいではなかろうか。
見せかけることにどんなメリットがあるのかは不明だが。

しかし辺りを見まわすとすぐに疑いは晴れた。
くだんの花は結実していたのである。

右の写真をご覧頂きたい。
熟して種子が弾け飛んだ後の実は、
非常に特徴的で見間違いようがない。

花が終わると、中央のめしべがそのまま
ずんずん伸びて実になる。
上の写真にも写っているように、
ちょっと燭台っぽい雰囲気だ。
これが時期が来ると根元から弾け、
カタパルトよろしく種子をぶっ放すのである。

それにしてもずいぶん思い切ったそり返りっぷりだ。
脇役手塚キャラの髪型なんかをも思わせる造形は、
一種メルヘン調でもある。

リボンの騎士を知らなかった時代の人々は、
これを神輿のやぐらに喩えた。
ミコシグサの別名を持つゆえんである。

別名はともかく
本種の標準和名はかなりふるっている。
ゲンノショウコは名高い薬草だ。
葉と茎に含まれるタンニンは
収斂・抗菌・消炎等に効果がある。
その薬効は古くから知られ、
少なくとも江戸初期にはすでに
下痢止めの民間薬として普及していたようだ。

飲めばたちどころに効果があらわれる。
これぞありがたい薬である偽らざる証拠なり。
ってなわけで「現の証拠」と名付けられた次第。
たちまち効くってんでタチマチグサの地方名もあると聞く。

いずれにせよガマの油売りの口上じみており、
薬屋の能書きがそのまま植物の固有名詞になった
稀有な例といえよう。

ところで肝心の薬効成分であるタンニンであるが、
これはかなり苦く渋い。

本成分はゲンノショウコの専売特許ではなく、
お茶の渋味や苦味を演出しているのも
タンニンであることはよく知られている。

このため巷にはどうも
「タンニン=渋い」っつうイメージがあり、
薬効があるとか健康にいいとか言われても
あまりいい顔をされない。

そこで食品メーカーの方々は一計を案じた。
他の名称に言い換えて薬効を謳えば、
健康にうるさい現代人には
セールスポイントとして通用するに違いない。

ここ数年来、
さまざまな食品の成分として喧伝されている
カテキンやポリフェノールとは、
このタンニンの別名に他ならないのであった。

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10月 あきるの市

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