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再三名前を出している以上は、ここらでご本尊に登場願おう。 |
皆さんも七五調の 「春の七草」のフレーズはご存知だろう。 せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ 春の七草(これぞ七草) 私はいつもこれを山上憶良の作と勘違いしてしまう。 憶良が詠んだのは「秋の七草」であり、 春の方は詠み人知らずである。 つーか植物名が列挙されてるだけで 歌じゃないよこれ。 「ごぎょう」が現在のハハコグサであり、 「すずな、すずしろ」がカブとダイコンであるように、 詠まれている名前はすべて古名だ。 ここに挙げられた「ほとけのざ」は、 現在のコオニタビラコを差す言葉であり、 ホトケノザとは別な植物なのである。 先日、駐車場の縁に顔を覗かせたホトケノザに カメラを向けていたら、 例によって通りすがりの奥様方に声をかけられた。 そんなに気さくな感じなのかな俺。 「なんていうお花なんですの?」 「ホトケノザですよ」 「ああ、これがホトケノザ!」 名前を知っていて花を知らないのはちょっと怪しい。 七草の方で知っているだけなんじゃなかろうか。 そんな不安が頭をよぎった。 これをむしってお粥に入れられたら大変だ。 毒ではないので命に別状はないはずだが、 たぶん、まずい。 つい付け加えてしまったものである。 「春の七草のホトケノザとは違うんですけどね」 とんだお節介だ。 彼女達は納得した様子で次の疑問を口にした。 「珍しい花なんですか?」 いえいえ、珍しくもなんともないですよ。 私がその駐車場でホトケノザを撮るようになって、 実はもう3年目になる。 奥様方は撮影地のご近所さんらしかった。 おそらく毎日のようにそこを通り、 毎春小さなお花畑を目にしていることだろう。 それがある日けったいな男が 一心にカメラを向けているのに出くわした。 「あらっこれって珍しい花だったのかしら?」と 思ったとしても無理はない。 まあ、たまたまその男は 珍しくない花が好きだったんですよ。 そんな私も結構オトナになるまで 本種とヒメオドリコソウを混同していた。 同じシソ科の植物だし、微妙に似ていなくもない。 しかし比べてみればご覧の通り 明らかに違う花である。 その辺の違いが判るようになって、 そこいらの花を撮るのが楽しくなったのだ。 声をかけてきた奥様方も、 これからは毎年春になると 「ああ、ホトケノザが咲いたわ」と思ってくれればいいな。 そんなことを考えた、晴れた日の朝だった。 |
![]() 3月 千代田区 ![]() 2月 文京区 |
![]() 2月 小金井市 |