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タイワンホトトギス  10月 千代田区

ホトトギス   杜鵑草          ユリ科


鳴かぬなら殺してしまえ不如帰。

この地味な植物の名前は
鳥のホトトギスに因むものとされる。
花弁に散る斑点をホトトギスの胸の模様に擬したとか、
若い葉に見られる油点に由来するとか言われている。
いずれにせよ風情のある名だ。
ヘクソやママコとは大違いである。

とはいえ鳥の方のホトトギスは
なかなか食えない輩であることはご承知の通り。
連中は他の鳥の巣を襲い、
勝手に卵を産み付けて育てさせる。
托卵と呼ばれるこの習性は、
同属のカッコウにも見られる現象である。

そのような怪しからぬ鳥になぞらえられる本種も、
欧米の人から見るとやや印象が異なるらしい。
英名はToad Lily。
すなわち"ひきがえるの百合"である。
湿った日陰に生えていることもあり、
イメージ的にはこれはこれで納得はゆく。


秋は実りの季節である。
自然の状態で見られる花々は、
春夏に比べてずっと少なくなる。
9月から11月にかけて花期を迎えるホトトギスは、
この時期に我々の目を楽しませてくれる
数少ない草花だ。
民家の庭先や公園に植えられているのも見かけられる。

栽培種の常として、
ホトトギスにも細かい品種がいろいろある。
ざっと十数種が知られており、
その区別は素人目には難しい。
写真の花は皇居東御苑に咲いていたもので、
調べた結果タイワンホトトギスだと判明した次第である。
本来の自生地は台湾から西表島のあたりらしい。
人気があるのか栽培が容易なのか、
都内でも新宿御苑だの石神井公園だの
あちこちに植えられている。

花はユリ科の特徴をよく表しており、
近くに寄ってみると
毒々しいとは言わないまでもちょっと奇態な雰囲気だ。
しかし実際には3センチ程度しかないため、
ぱっと見は決して派手ではない。
色は紫系統がポピュラーだが、
白花を咲かせるものや黄色い花をつけるものもある。

茶道を嗜む向きには人気の茶花であると聞く。
名前のせいもあるのだろう。
これがひきがえるの百合では少々侘び寂びに欠ける。

ホトトギスはルリタテハの食草でもある。
待っていれば蝶が来るかな、と思ったが
残念ながら会えなかった。

いよいよ秋本番。


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10月 千代田区

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