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4月 東村山市

キンラン   金蘭      ラン科


キンランといえばドンスであるが、
この花とは別に何の関係もない。
金色の蘭だから金蘭。
似たような感じで白色のギンランもある。

ランというと咄嗟にカトレアやシンビジュームといった、
トロピカルな洋蘭が思い浮かぶ。
しかし実際は非常に多種多様な姿形をもち、
世界中に広く分布する仲間なのである。
日本にもけっこうな数が自生しており、
それ専門の愛好家も多い。

キンランはエビネやシュンランと並び、
人気の高い野生ランのひとつである。
理由はいうまでもなく花の美しさだ。

春も半ばを過ぎ、早春の花々の祭りも峠を越した頃。
葉を伸ばし始めた雑木林の中に足を踏み入れると、
3、40センチほどの高さに立ちあがる
金色の蕾を見つけることができるだろう。
日の翳った林の中にともる燭台にも似て、
散策者の目を楽しませるキンランの開花である。

時が経つと蕾は綻ぶが、
その開き方はいかにも控え目だ。
開き切ったところで、せいぜい写真の程度。
それでも花弁の隙間からは
蘭の花らしい華やかさが零れ出ている。

この美しさに目を止めるのはひとり散策者に留まらない。
キンランは盗掘の格好の目標となっている。
前日ようやく蕾が出たと思ったら、
今日は跡形もなく消え失せているケースは珍しくない。

地元では盗掘による消滅を防ぐため、
蕾を見ると折り取ってしまう人も多いと聞く。
花がなければ気付かれないからである。
そんなことをしたら枯れちゃうのでは、という心配もあろうが、
キンランに関して言えば根が残っていればまた花は咲く。

 ただしこの辺は種類によって異なるので、
 花や芽を摘むと枯れてしまう植物もある。
 早春の味として名高いタラの芽は、
 摘み過ぎると枯れてしまう。
 採取の際はくれぐれも留意して頂きたい。

このような花折り作業は、
種の保存という長いスパンの視点に立った保護活動であり、
理屈では判る。
だが、花を愛するあまり
咲く前に摘み取ってしまうというのは、
一種本末転倒というか
非常に切ない行為と言わざるを得ない。
ポッキリ花茎を折られた株を見るのは悲しいものだ。

折り取られた花はどうなるのだろう。
基本は花好きの所業である。
一輪挿しに飾ったりして愛でているに違いない。

それってやっぱり何か変じゃないか?

彼らをそんな異常行動に走らせているのは、
マニアや業者の度を越した盗掘なのである。

我々が植物の絶滅の原因と聞いて
まっ先に思い浮かぶのは、自生地の乱開発だ。
しかしレッドデータブックの報告では、
絶滅危惧種146種のうち実に60種に関して、
業者やマニアによる濫獲を絶滅化の第一要因に数えている。
(保育社「日本の絶滅危惧生物」1993による)

やはり野に置け蓮華草。
とは言うものの、
人には美しいものを
自分の手元に置いておきたい欲求があるものだ。

決して簡単とはいえない蘭の栽培とはいえ、
成功している人はいるはずである。
ここはひとつ人為的に増やし、
園芸植物としての普及を目指してはどうか。
愛好家諸氏の奮起に期待する次第である。

んでもなあ。
いくら園芸種が普及しても、
結局養殖ものより野生種の方をありがたがっちゃうのよね。
マニアさんてば。

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4月 東村山市

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