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4月 町田市

コオニタビラコ   小鬼田平子    キク科


ホトケノザの項で触れた、
これが春の七草の「ほとけのざ」の花である。

地面に貼りつくように広がったロゼット状の葉を、
仏像の台座になぞらえたものらしい。

こうやって花を見てもあまりピンと来ないが、
七草の時期にはまだ花はない。
寒い冬を凌ぐため、
若葉はもっとしっかり地面に貼りついている。
もう少し仏様が座りやすい形にも見えるだろう。

一方、コオニタビラコの名は
「小さいオニタビラコ」から来ている。

オニタビラコはやはりキク科の植物で、
本種とは別属だが花はよく似ている。
ただし葉や茎、生える場所はまったく異なる。

街を歩いていて、道路脇のアスファルトから
排気ガスをものともせず長い茎を伸ばしている
小さな黄色い花を見かけることがよくある。
これがオニタビラコだ。

花自体はコオニタビラコよりも小さいくらいだが、
なんせ背が高い。
数十センチに達することも珍しくなく、
「オニ」の名はここから来ている。
何しろたくましい植物で、
都心のオフィス街などでも普通に見かけることができる。
建てたばかりのビルの前の植え込みなんぞにも
ひょっこり顔を出しており、
また花期も4〜10月頃と異常に長い。

これに対し、コオニタビラコの花は
3月頃から咲き始め、せいぜいもって5月まで。
そして水田にしか生えない。

右中の写真をご覧頂きたい。
今回の撮影地である。
昨今、このような場所に行き当たるのは
こと都内に限っていえば決して容易ではない。

フィールドガイドのたぐいには、
「七草の中では見つけるのが一番むずかしい」などと
記されている。
野生のダイコンやカブを探し出す方が難しい気もするが、
これらは畑に植わってる奴でOKなのだろう。

私も花を見たのは何を隠そう今回が初めてである。


地図を見ながら
この隠れ里めいた場所に足を踏み入れた瞬間、
写真手前の大きな休耕田を埋め尽くす
一面の黄色い花に気づいた。

「わあ、これが全部『ほとけのざ』だよ」と
驚きとともに実感が沸いてきたのは、
しばらく経ってからのことである。

黄色の彩りにはカントウタンポポやキツネノボタンも
一枚噛んでいた。
ちょっと気の早いレンゲが処々にアクセントを付けている。
畦道にはムラサキサギゴケが賑やかに舞う。

しばらく歩くと畑の中からカン高い鳥の声が響いた。
晴れた空に軽く孤を描き、
降り立った姿をみるとニホンキジである。


それは実際の郷里の記憶にはないはずの、
日本のふるさとの春の景色だった。

好日。



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コオニタビラコの咲く場所
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4月 町田市

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