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9月 あきるの市

ママコノシリヌグイ     継子の尻拭      タデ科


「千葉いきもの図鑑」の著者・前園泰徳をして、
「もっとも強烈かつ陰湿な植物名」と
慨嘆せしめた和名である。

夏から秋にかけてはタデ科の植物の花盛りだ。
たいていは赤味を帯びた小さな花が寄り集まった花序を、
そこかしこに見出すことができよう。
本種もそんな仲間の一員である。

それが何故かような妙ちきりんな名前を頂くに至ったか。
これはどうやら、
茎や葉にびっしりと生えた下向きの鋭いトゲに
秘密があるらしい。

ママコについては言うまでもあるまい。
まま子まま母の関係といえば、
シンデレラの昔から語り継がれてきた
人類宿生の業のひとつである。
主人公の娘ははたいがい病弱で優しい母親を亡くした後、
とち狂った父親がすんごい性悪の後添を娶ってしまう。
新しい母親はことあるごとに
前妻の子である彼女をなぶりいたぶりまくるのだが、
娘は歯を食いしばってひたすら耐え忍ぶ。

その健気な姿に帝都の婦女子は紅涙を絞り、
男子連中はいらざる興奮を覚えたりするのであった。

そんなある日、まま母は叫んだに違いない。
「また粗相をしたね、この子は!
そんな言うことを聞かないお尻は、こうしてくれる!」

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そして鋭いトゲの生えた葉を手に取り、
怯えて立ち尽くすカナコの下ばきを乱暴に引き下げると、
露わになったその柔らかい部分に押し当て激しくぐいぐいと。
何書いてんだ俺。誰だよカナコ。


このトゲは実際にかなり鋭く痛い。
ご覧のようにひょろひょろと風に揺れる花なので、
手で抑えようとして少しく痛い目にあった。
なんせ茎だけでなく葉の裏も一面トゲトゲで、
どこを触っても刺さるのだ。
ママコの苦しみや推して知るべし。しくしく。

ところでこの季節、トゲトゲのタデ科の花は
実は本種だけではない。
よく似てさらにひょろひょろとスリムで
トゲの少ない仲間にアキノウナギツカミがある。

この脱力感すら覚える和名は、
ウロコがなく体表が粘液で覆われたウナギは
ぬるぬるとつかみにくいものだが、
トゲトゲがあれば大丈夫滑らない、という由来であるらしい。
花の写真は
めりいさんpresents「ヨヒコノハナミ」に紹介されているので、本種と見比べてみて頂きたい。
最近こんなんばっかだな。

ママコノシリヌグイだの
アキノウナギツカミだのの咲く秋の野山であった。


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8月 東村山市

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