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5月 あきるの市

ミミガタテンナンショウ    耳形天南星 サトイモ科

異相の花である。

もっともサトイモ科の植物の花はどれもこんな感じだ。
筒の中から顔を出す付属体と、
それを覆うように拡がる仏炎苞。
花というよりは何か不気味なオブジェの印象がある。

ただしこの仲間内でも、
ミズバショウだけはなぜか
美しいとか清楚とかいう前向きな形容を頂いている。
基本的に花の形は同じなのに。白いせいだろうか。
色の白いは七難隠すとは良く言ったものだ。
なんかズルいと思う。

私は大概へんてこなものを愛しているので、
サトイモ科の花はどれも好きである。

ことに天南星という美しい名前を持つArisaema 属の花は、
その堂々としたたたずまいも含めて
私を惹きつけてやまない。
草体は50センチくらいの高さに立ち上がり、
10〜15センチほどの目立つ大きな妖花をその先端に開く。
ギョッとするような素敵な眺めだ。


しかしいずれも魅惑的なテンナンショウ属の、
それぞれの種類を見分けるのはかなり難しい。
なにしろ花の構造が似すぎているのだ。
山と渓谷社「春の野草」にも
「分類が極めてむずかしい」とある。

写真の花も、
見つけた時は同属のカントウマムシグサだと思っていた。
その後各種の図鑑や資料をひもといてみた結果、
名前の由来である仏炎苞の縁の雰囲気や、
都下に自生の報告が多いことから
ミミガタテンナンショウではないかと同定したものだ。
つっても未だに確固たる自信はない。
もしこの写真から確定できる方がおられたら、
ぜひご一報頂きたいと願う次第である。


これが例えば右中に示したウラシマソウだと、
「浦島太郎の釣り糸」がぴょんと伸びていて判りやすい。
写真は小石川植物園の敷地内に生えているもので、
毎年撮影にゆく一群だ。
いわゆる花壇に植わっているわけではなく、
崖の途中に無造作に生えている。

植物園というとどうしても植栽された草花に目がゆきがちだ。
しかし小石川や神代植物公園などでは、
植物の生える環境自体がまるごと保全されているため、
ラベルのないこれらの野草やきのこが
その辺に勝手にはびこっている。

そういったゲリラ達を探して歩くのも、
私が植物園に足を運ぶ楽しみのひとつである。


マツバウンランの項にも記したが、
数年前に広島を訪れたことがある。
同地出身の友達に話を聞いて宮島を登っていったら、
頂上付近でコウライテンナンショウの群落に出くわした。
驚喜のあまりずいぶん無駄にフィルムを消費したものである。
その際の写真は「路上の楽園」の夏のページに収められているので、
興味のある方はご参照頂きたい。


今回、なじみの撮影地でこれらの花に出会った時も、
やはり相当に血沸き肉踊ったことはいうまでもない。
上の写真を撮ってしばらく歩いた後、
ちょっと開けた栗林に立ち尽くしていたのが下の花である。
まだ咲き始めて間もないとみえ、
この仲間の特徴である仏炎苞は
花筒に蓋をすることなくまっすぐ直立していた。

逆光に透けるその姿はたしかに、
菩薩の背にたちあがる炎の姿のようでもあった。
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5月 あきるの市

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ウラシマソウ    4月 文京区
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5月 あきるの市

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