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8月 港区

ヌスビトハギ      盗人萩      マメ科


秋の七草に数えられる萩はマメ科の植物である。

一口に萩と言ってもその種類はむやみに多い。
ただでさえマメ科の花は大なり小なり似通っている上、
センダイハギだのミヤギノハギだのアマメハギだの、
栽培品種も加わると素人目にはもはや区別がつかない。
細かいボケだがアマメハギは植物ではなく妖怪だ。

ハギと名のつく植物が
いずれもそれなりに典雅な雰囲気を纏う中、
ひとり異彩を放っているのが本種である。
なにしろ盗人だ。
ドロボウに花鳥風月もへったくれもあったものではない。

ヌスビトハギは晩夏、
秋風立つ頃になると淡紅色のちいさな花をつける。
ご覧の通りなかなか可憐なたたずまいを示す。
かように可愛らしい花が
なにゆえ窃盗犯の汚名を頂戴するに至ったか。

名前の由来には例によって諸説ある。
共通しているのは、
どれもその果実に端を発している点である。

秋に実る果実は花の数倍はあり、非常に目立つ。
右に示した通り、
弓なりの半月型のさやが2個づつ行儀よく並んでいる。
すごいタレ目の人のような塩梅だ。

その下の写真になると実が熟し、
タレ目の白目の部分が茶色く染まっている。
この茶色は汚れではない。
よく見ると非常に細かい毛が密生しているのが判る。
触ってみると独特のざらざらねばねば感がある。

ヌスビトハギの果実はこの細かい毛を使って、
マジックテープよろしく衣服に貼りついてしまうのだ。
貼りついた相手と一緒に移動し、
旅先で落ちてその地に芽吹く。
このようにして版図を広げてきた植物なのである。


名前の由来に話を戻そう。
ヌスビトハギの語源として有力なのは次の2説である。

1)実の形が盗人の忍び足に似ている。
2)実が知らない間にこっそり服に付くのが盗人っぽい。

悲しいかな、どちらも今ひとつ説得力に欠ける。
強いて言えば前者の方が
実の並べ方によってはそう見えないこともない。


由来のしっくりこない名前ではあるが、
植物自体のたたずまいには
何となく似合っているようにも思える。

ヌスビトハギはあまり日の当たらない林下に生えている。
晩夏から初秋にかけて、
まだ葉をつけた落葉樹林の中。
日陰にひっそりとタレ目型の実が並んでいる風景は、
ご法度の裏街道をひた走る
盗賊たちの姿と重ならないでもない。

ヌスビトハギと同じ頃、
同じような場所に実を結ぶ植物に
近似種のアレチヌスビトハギがある。
こちらは実が2個ではなく3〜6連のサヤになっており、
衣服にはつかない。

アレチと名の付く植物は帰化植物が多い。
アレチヌスビトハギも例外ではなく、
北アメリカ原産のストレンジャーである。

花もちょいと派手なのは舶来品ゆえだろうか。

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10月 練馬区

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10月 練馬区
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アレチヌスビトハギ  10月 練馬区

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