benikometsuki0509_1.jpg (22315 バイト)
5月 東京都あきるの市

ベニコメツキ  Denticollis nipponicus
分布:北海道〜九州

硬い前翅をもつカブトムシやコガネムシの仲間、
甲虫類(鞘翅目)は
昆虫の中でももっとも種類の多いグループである。
全世界で数十万種、
日本国内だけでもおよそ7000種が生息しているという。

これらすべての名前と形を把握するのは、
まず専門家でも不可能である。
私のような半可通にはまったく無理な相談っつうもんだ。
ここに紹介しているような昆虫たちでも、
とりあえずは名前も何もわからず
写真だけ撮ってるケースは少なくない。

ただ、カメラを向けるにはそれだけの理由がある。
名前が判らずとも美しかったり面白かったりするのだから。

今回の被写体も、
その見事な紅の翅に惹かれて
思わずシャッターを切ってしまった相手である。
名前も勤め先も携帯の番号もわからない。
わかってたまるか。

それでも大体の目星はつける。
撮った時はハナカミキリの仲間だろうと踏んでいた。
しかし図鑑を繰ってみても
ちっともそれらしい写真は見あたらない。
カミキリモドキかと思ったがこれも違う。
仕方ないのでヒラタムシの項を探すが見つからない。

ハムシを調べ、ベニボタルを当たって
やっと最後に辿り着いた名前が
ベニコメツキだったのである。

コメツキムシといえば夜、
明かりに惹かれてやってくるアイツだ。
ひっくり返して置いとくと胸節の突起を利用して
パチンと飛び上がり、
勝手に起き上がってスタスタ歩き出す甲虫である。
なじみの顔でよく見知ってはいるが、
いずれも地味なオッサン連中だ。
一味にこんな艶やかな姐さんを擁するとは
ついぞ思わなんだ。

いわばコメツキ一家の紅一点である。
あばしり一家なら菊の助の役どころだ。古いねどうも。

言われてみれば胸節の両側の腹に近い方に
顕著な突起が確認できる。
確かにコメツキムシ一族の特徴だ。

鮮やかな前翅には粗い点線が刻印され、
これが艶消し効果となって
独特のフラットな質感を演出している。
櫛状の触角もなかなか伊達者っぽい。

決して希産種ではないものの、
その生活史はいまいち知られていないらしい。
図鑑の註釈も
「主として小動物を捕食すると思われる」と
ちょっと曖昧であった。
この場合の小動物はむろん昆虫やクモやダニ類を指す。
ネズミやリスを取って喰う訳ではないのでご安心を。

それにしてもコメツキムシの仲間だと知っていれば、
その場でさっそくひっくり返して差し上げたのに。

残念。
benikometsuki0509_2.jpg (16894 バイト)
benikometsuki0509_3.jpg (21243 バイト) 5月 東京都あきるの市

→INDEX    →TOP