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8月 東京都東村山市

ベニシジミ       Lycaena phlaeas
分布:北海道〜九州


オレンジ色のタータンを着込んだ可憐な蝶だ。
バーバリー調といえなくもない。
胸元などに1頭とまらせておけば、
きっと女子高生にも大人気。

とはいえ、翅をひろげたサイズはせいぜい2センチ程度。
シジミのように小さい蝶だからシジミチョウ。
水産業に堪能だった大和民族らしい命名である。
そういえば2枚貝が開いた図は、
翅を開いた蝶にも見える。
もっともアサリ蝶やサザエ蝶は存在しない。
サザエは2枚貝じゃないって。

世間には蝶屋と呼ばれる人々がいる。
つまり蝶専門の昆虫採集家だ。
そして彼らが最も熱中する対象こそ、
この一寸に満たないシジミチョウの仲間なのである。


シジミチョウは熱帯から寒帯に至る世界各地に分布する。
形態や色彩は変化に富み、
そのバラエティ豊かな美しさはしばしば宝石箱に喩えられる。

殊にミドリシジミ亜科に属する一群の蝶たちは、
ラテン語で西風の妖精を意味する
ゼフィルスの名で総称され、
世界中に熱狂的なマニアを持っている。
虫好きで有名だった手塚治虫氏も、
「ゼフィルス」という美しい短編を遺している。

しかし蝶屋さんたちが
本種ベニシジミに目を向けることはまずない。
あまりにもどこにでもいる普通種だからである。
生態系保全のための報告なんかにも、
「特に本種に絞った保全の必要はない」と
明記されているくらいだ。

実際、分布域もだだっ広い上に
年に5、6回にわたって発生するため、
ほぼ3月〜11月の間は成虫を見ることができる。
真冬以外ならOK。

そんな次第で稀少価値は皆無だが、
逆に言えばほぼ一年中、いつでもどこでも
我々はこの可憐な蝶に出会うことができるのだ。
むしろそのことを幸せだと思いたい。

幼虫の食草はスイバやギシギシの仲間である。
いわゆる雑草を餌にしている点も本種の強みといえよう。
成虫はさまざまな花にとまって吸蜜する。

私的には、
やはり雑草でありながらどこか楚々とした風情の
ヒメジョオンの白い花束が、
この元気なはねっ返りの町娘には
似つかわしいような気がしている。

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8月 東京都千代田区
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8月 東京都東村山市

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