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7月 東京都あきるの市

ゴマダラカミキリ       Anoplophora malasiaca
分布:北海道〜沖縄・対馬


ものすごーく普通種のカミキリである。
少なくとも本州で虫採りをした経験があって、
本種にまったく見覚えのない人はいまい。

もちろん世の中にはゴマダラより生息数の多い昆虫は
ごっそりいるのだが、
なぜか非常に目に付く存在なのである。

ひとつは目立つカラーリングだろう。
プラスチックじみた樹脂光沢を放つ濃紺のボディに、
散りばめられた白い点は
修正液で打ったドットさながらの鮮やかさ。
長い触角と6本の足は
丁寧に紺と空色に塗り分けられている。

サイズも手頃だ。
これがハエ程度の大きさなら子供は気に留めまい。
下手なコクワガタ並の体格は、
仲間のシロスジカミキリにこそ及ばないが
単体でみればなかなか堂々として風格もある。

そして何よりも生息場所。
ゴマダラカミキリはちょうど我々が
気軽に虫捕りにゆけるあたりに暮らしているのだ。

人は今現在自分の求めている対象に注意を払う。
虫を探していて出会う虫は、
買物の途中で目の前を横切る虫よりも印象が強いものだ。

そんな訳で、
小学校1年まで過ごした大阪でも
中2まで籍を置いた東京でも、
ゴマダラは常にもっとも身近な甲虫のひとつだった。

しかし我々ガキ連中の間におけるゴマダラ人気は
きわめて微々たるものに留まっていた。
最大の関心事はやはりクワガタやカブトであり、
ゴマダラやミヤマ、ウスバ等のカミキリムシは
あくまで昆虫採集のオプションに過ぎなかったのである。

クワガタもカミキリも同じ甲虫類なのに、
なんでかねえ。

シーモンキーからシロアリ、イモリやハムスターに至るまで
さまざまな生物を飼育した私だが、
ゴマダラを飼った記憶はない。
少年時代の私の枕頭の書であった、
旺文社の図鑑「生きものの飼いかた」にも
カミキリムシの飼育に関する項目はなかった。

オトナの昆虫マニアには
カミキリ類に血道を上げる人も少なくはない。
但しそれはおおむね美しく珍しいハナカミキリや
地域亜種の多いレアものに対するコレクター人気である。
ゴマダラ君のような馴染みの客は
あまり見向きはされないものだ。

そのように粗略に扱われがちな普通種ゴマダラも、
長じてからはめっきり出会いの機会が減ってしまった。
あまり虫採りに出向かなくなったせいもあるが、
都市部では明らかに生息数が減っているように思う。

だから2ヶ月ぶりに足を踏み入れた里山で
彼等に会えた時は本当に嬉しかった。
その辺の木の手の届く場所に、
普通にゴマダラが歩き回っている。
むんずと首根っこを捕まえると、
やっぱり足をバタバタさせて大あごを開き、
首筋を振ってきいきいと文句を垂れるのだ。

明るい雑木林の中、
父親に連れられた子供が
一匹のカミキリの長い触角を持ってブラブラさせていた。

小学校の同窓会に出たような、
それは懐かしい光景だった。

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7月 東京都あきるの市

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