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9月 町田市

ハラビロカマキリ  Hierodula patellifera
分布:本州以南

ハラホロヒレハレに似た語感の昆虫である。

カマキリやオオカマキリの項で
名前を紹介ずみの、こちらがご本尊だ。
ポイントである脇腹の白い斑紋がよくわかる。
もっとも、模様を確認せずとも
全体のフォルムが幅広いため同定はむずかしくない。

中〜大型のカマキリの見分け方を
イメージで述べると、
だいたい以下の感じになる。

イ)とにかく大きい…オオカマキリ
ロ)むやみに細長い…カマキリ
ハ)寸詰まりで横幅が広い…ハラビロカマキリ

非常に漠然としているが、
ある程度の数を見ればなんとなくわかるようになる。
いや、わかるような気がする。

実はこの3種類の他に、
ひそかにウスバカマキリという難物が控えていたりもする。
この種については、紹介する機会があったときに
また改めて述べることにしたい。


カマキリやオオカマキリに比べると、
ハラビロに会うチャンスはあまり多くない。
これは私の行動パターンのせいでもある。

カマキリやオオカマキリは
草原など開けた場所で多くみられる。
対してハラビロは割と森林性のカマキリなのだ。

割と、とあいまいな書き方をしたのは、
図鑑には草原や畑の昆虫だと書かれているからである。
森林性だってのは私の個人的な印象にすぎない。
他の地方にゆけば、
畑や草原でざかざか見られるのかもしれないことは
お断りしておく。

現場偏重主義の人間はしばしば、
自分の経験の範囲内でしかものごとを判断できない
視野狭窄に陥りがちである。
フィールドワーカーが研究室の引きこもりより偉いってのは、
けっこう幻想に過ぎないのだった。


前に述べたようにカマキリは秋の虫である。
私が森をおとずれるのはたいてい夏であり、
秋には草原で花やチョウを追っかけている。
それゆえハラビロに会う機会が
他の種類よりすくないのではないだろうか。
私はそのように考えている。

これは裏返せば
夏場にはしょっちゅう森に行っているわけで、
だから成長する前の
ハラビロカマキリの子供たちにはちょくちょく出くわす。

右中の写真は昨夏に
目黒の自然教育園で撮影した一枚だ。
カラマツソウの看板に逆さにとまっているのが、
ハラビロの子供である。
親同様に腹が幅広く、つーか平べったく、
このようにそっくり返っていることが多い。


ハラビロカマキリが森林や低木で見られるひとつの理由は、
彼らが樹の幹や枝に産卵するからである。

虫たちの生息域は産卵場所や
子供の育つ環境に合わせて決められることが多い。
「人間より子供思いだなあ」とうっかり感心しそうだが、
それはちょっと違う。
人間は子供の時期は10〜20年程度で、
大人になってから50年だの60年だの生きている。
ところが昆虫の場合、成虫の期間なんて
一生の1割にも満たなかったりするのがザラだ。
セミなんぞ7年かかって成長し、
オトナんなったら1週間ですぜ。

言い換えれば虫の一生はその殆どが子供なのだ。
子供の育つ環境に重きが置かれるのは、
あたりまえなのである。


巨木の幹を登っていた一匹のハラビロカマキリも、
あるいは産卵場所を求めていたのかもしれない。
樹の下の方をトントンと叩くと、
不機嫌そうにくるりと振り返った。
しかし私の手が届かないのを確認すると、
ふたたび何事もなかったように登って行った。

やがてその姿は樹冠に紛れて見えなくなり、
私も山道に戻った。

木漏れ日の眩しい九月の午後のことである。
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呼んだ?


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ハラビロカマキリ幼生   8月 港区




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 9月 町田市

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