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10月 東京都あきるの市

ホシホウジャク    Macroglossum stellatarum
分布:北海道〜沖縄


花言葉で紹介したツリフネソウのお花畑である。

ほけっと見とれていたら、耳元でぶうんという羽音がする。
慌てて首を竦めると、
4センチ程の茶色い紡錘形の影が視界を横切って行った。
ホウジャクだ。
大きさといい羽音といい、
スズメバチのたぐいを彷彿とさせるこの昆虫は
ガの仲間なのである。

ホシホウジャクを擁するスズメガの一族は、
生物界きっての高速戦闘機だ。
いや別に戦闘はしないのだが、
そのフォルムは確かにメッサーシュミットや
スピットファイアのそれに近い。

空気抵抗の少ない流線型のボディと、
シャープな三角形の翼は
抜群の飛行性能を保証する。
そのスピードは実に時速56kmに達し、
これはヤンマの48km/hを凌いで堂々の昆虫界最速だ。
空中静止やバックも自由自在。
まさしく空の王者、トップガンである。

本邦ではスズメ扱いのこの昆虫は、
英語圏でHawk Mothの名を頂戴している。
高い飛行能力に相応しい、
なかなかカッコいい称号と言えよう。

もっとも、実際に花の間を飛びまわり吸蜜する様子は
スズメともタカとも違う。

右の写真にあるように、
彼らは花に止まることなく、
至近距離でホバリングしたまま
長いストローを差し込んで蜜を吸う。
数秒の後にはさっと離れ、
羽音を立てて別な花へと飛んで行く。
その姿はあの飛ぶ宝石、ハチドリそっくりなのだ。

こんな相手だけに、デジカメでの撮影は
決して容易とはいえない。
これはという花に狙いをつけ、
ピントを固定してひたすら待つことになる。
どうにか数枚はフレームに収めたが、
1/500程度のシャッタースピードでは
やはり翅を写し止めるのは無理だった。
それでも本体は止まって見えるのだから、
いかにきっちり空中で静止しているかが
判ろうというものである。

ちなみにお花畑には他のお客さんも来ている。
カメラを構えていたら
再度耳元で「ぶうん」と音がした。
よし来たか、と横目で見たらくまんばちだった。

慌てて逃げた。

近縁のオオスカシバCephonodes hylas
翅が透き通っており、さらにハチに酷似している。

幼き日の漫画家・重野なおき氏は、
これらの種がハチではなくガであることを
正しく主張し続けたという。

「『ウソつけバカヤロー』って言われるだけで
全然信じてもらえませんでした」

悲しげに眉毛を下げて語る姿に、
私は「それでも地球は回る」と呟いた
ガリレオの面影を見たのだった。
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オオスカシバ 8月 文京区
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 10月 東京都あきるの市

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