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5月 東京都あきるの市

キンイロジョウカイ       Themus episcopalis
分布:本州・四国・九州


里山紀行で紹介したジョウカイボンの仲間である。
保育社「標準原色図鑑・昆虫」を手がかりに、
左の写真の個体はキンイロジョウカイであると同定した。
但し下の写真のものは、
ジョウカイボンAthemus suturellus の可能性がある。
まとめて紹介するのは少々乱暴だが、
別々に紹介するのもアレなのでご容赦願いたい。

「ジョウカイボン」とは、
昆虫に興味のない向きには耳慣れない単語であるに違いない。
何語であるかすら怪しいが、
れっきとした日本語名である。漢字もあるぞ。
浄海坊。
僧職の人であるらしい。

実際、ジョウカイボンの名は
浄海なる坊さんに由来するようだ。
ただ、困ったことに定説がない。
「世界大博物図鑑」では、昆虫学者の長谷川仁氏の説を
一例として紹介している。

氏によれば浄海とは即ち平清盛の法名である。
清盛が原因不明の高熱(マラリアとされる)を発して
他界したのはよく知られるところだ。
ゆえに、
「肌に触れると
熱いくらいの炎症を引き起こす毒を持つ虫」を
清盛の亡霊として浄海坊の名をつけたというのである。

もっともジョウカイボンには
触っただけで炎症を起こす程の毒性はない。
(体内には有毒成分があるらしく、
鳥が捕食しないという報告がある)
長谷川氏はもっと有名な有毒甲虫の
カミキリモドキやゲンセイと
混同されていた可能性を指摘している。

語源自体があやふやな上に
混同があったのではたまったものではない。

そんな得体の知れない名前を持つジョウカイボンは、
実際に微妙に得体の知れない昆虫である。

「いつか見た東京」でも記したが、
私は最初この虫の飛び方と姿形を見て
カミキリの仲間だと思った。

ところがジョウカイボンは分類学的にはカミキリよりも
むしろホタルに近い種類なのである。
その証拠のひとつは食性で、
この黄色いソックスを履いた甲虫は
けっこう獰猛な肉食昆虫なのだ。
樹上で待ち伏せしては小さい虫を捕らえて食べている。
んで、そんな獰猛な割には妙に身体が柔らかい。
柔軟体操が得意だという意味ではなく、
甲虫類の特徴のはずの鞘翅があまり固くないのである。

このような翅の柔らかい甲虫を軟鞘類と呼び、
日本国内では65種類が確認されている。

なんだか掴みどころのない生き物だが、
英名はsoldier beetlesとちょっとカッコいい。
英語圏に生息する種のカラーリングが、
昔のイギリスの軍服に似ていることによるらしい。

これを「兵隊虫」と和訳してしまうと
あまりカッコよくない気がするのは何故だろう。

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ジョウカイボンAthemus suturellus

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