kabutomushi0803_1.jpg (36154 バイト)
8月 東京都あきるの市

カブトムシ(3)  Allomyrina dichotoma
分布:本州〜沖縄

ようやく梅雨が明け、夏らしい空が還って来た。
だから、カブトムシである。

本種については
すでに昨夏まる2章を割いて語っている。
それでもやはり出会ってしまえば写真を撮りたくなるし、
撮ってしまえば紹介したくなる。
この抜群の存在感と造形は、
やはり本邦産の昆虫の王様といえよう。

しかし前も述べたように、
養殖ものしか知らなかった子供の頃は
クワガタの方が好きだった。
カブトの魅力を知るには
野生のものに触れるに如くはない。

養殖はどうしてもブロイラー式になるので、
どこかひ弱な感じになっちまうのよね。
ザリガニなんかもそうだけど。


本当はクワガタもじゃんじゃん紹介したいのだが、
どうもクワガタの雄は夜行性が強すぎる。
日の高いうちは穴掘ってほじくり出さないと
あまり見つからない。
雌は結構昼間でも樹液にたかってるのに。

その点カブトは日中でも意外と平気で飛び回っている。
今回その存在に気づいたのは、
やかましい羽音のせいであった。
何かがブンブンでっかい音を立てて飛んでいると思ったら、
カブトの雄だったのである。
梢に止まったのを見届けて大喜びでとっ捕まえた。

で、ひとしきり撮影してふと辺りを見回すと、
いるわいるわ。
とりあえずその樹の周りだけで6,7匹は見つけた。

などと言うと林全体で数百匹は出てきそうだが、
そんなことはない。
虫採りの経験のある方はよくご承知だろう。
同じ種類の樹でも、
虫に好かれるのとそうでないのがある。
たまたま出くわしたのが、
幸運にもカブトムシの木だったのである。

ちょうど目の高さの辺りに樹液ポイントがあり、
一匹の赤銅色の雄が悠々と食事をしていた。
そこに黒光りのする別の雄が登場したところが、
下の写真である。
黒君は果敢に赤君ににじり寄ってゆく。
昨年は無理矢理闘わせてみたが、
今回は自然なランデブーだ。
さてどうなるか。

勝負はものすごくあっさり決した。
赤君は振り返りもせず黒君を足蹴にしたのである。
2,3回蹴りをくらったところで黒君はあきらめ、
他の酒場を探してさっさと枝を登って行ってしまった。
角の感じとか黒君の方が強そうだったのになあ。


この日、他の樹ではカブトの雄はさっぱり見かけなかった。
樹液は出ていても、首を突っ込んでいるのは
カナブンとハナムグリとクワガタの雌連中ばかりである。

コクワの雌が潜り込んだ穴を棒で突付いてみたら、
奥の方から代わりにうるさげに出てきたのが、
右のカブトの雌だ。
店子の苦情を受けて現れた家主といった風情である。
家主はうさんくさげに穴の周りを一周して
また潜り込んでしまった。
意外と中は広いらしい。


梅雨の名残の残る林をぶらぶらと歩いていると、
例によって他の散策者に話しかけられた。
よく日に焼けた感じのよい女性で、
両生類の観察に来ているとのことだった。
最初にこの地で捕まえたイモリが
もう7年生きているそうだ。
筋金入りのフィールドワーカーである。

少し離れたところでは、
引率者に連れられた子供たちの歓声が聞こえている。
「カナブンがすげーいっぱいいるよー!」
「うわー、アオダイショウだ!」
「クワガタ探したい人はこっちねー」

彼らにとっては、
素晴らしい夏休みの一日となったことだろう。

アオダイショウはともかく。
kabutomushi0803_3.jpg (23165 バイト)
kabutomushi0803_2.jpg (30239 バイト)



kabutomushi0803_4.jpg (32265 バイト)
 8月 東京都あきるの市

→INDEX    →TOP