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ナガゴマフカミキリ 8月 東村山市

カミキリムシ類
キマダラカミキリ/他
 Cerambycidae

夏の野山では実にさまざまな虫に出会うことができる。
中でもうっかりカメラを向けてしまうのが、
カミキリムシの一族だ。

造型が好きなのはもちろん、
サイズが人目に付きやすく
昼間でも活動する種類が多いせいもあるだろう。
今までもゴマダラやキボシや
ミヤマといった面々を紹介してきた。

とはいえ、国内に数百種が知られている
カミキリ類の全貌を掴むことは難しい。
ましてやその各種について
ひとつひとつ傾けられるほどの薀蓄は、私にはない。
今回失礼ながら少々マイナーな皆さんを
まとめて紹介させて頂こうと思う。

十把一絡げ組の第一弾は、
ナガゴマフカミキリ Mesosa longipennis である。
苔むした樹の幹になにげなく掴まってらっさる。
大きさは2センチ程度。
なかなかシックな装いのお兄さんである。
ちょいと和風な感じがしなくもない。

この手の中〜小型のカミキリは、
大型のそれとは違ってすこぶる警戒心が強い。
シャッターを1枚切った時点で感づかれた。
ゆっくりと登っていた足取りがぴたっと止まり、
瞬時に身体が硬直する。
そして2枚目を切る前にぽとりと墜落するのである。
落っこちた地面にはたいがい落ち葉が敷き詰められており、
きゃつはあっという間に身を隠してしまうのだった。

図鑑によればサクラやナシ、ミカンなどの
広葉樹の伐木に来る仲間であるらしい。


続く2人目は昨年何度かお目にかかった
キマダラカミキリ Pseudaeolesthes chrysothrix だ。
こちらは体長が3センチを超え、
おひげも立派である。
歩く姿も堂々としており、
まず大型の部類に属すると言ってもいいだろう。
ゴマフ君に比べると撮影も捕獲もずっと簡単になる。

特筆すべきはその独特のカラーリングだ。
くすんだ黄色を基調とした全身に、
濃赤色のまだら模様が入る。
まさしくキマダラの名前に違わぬいでたちである。
決して派手とはいえないが、
何か日本産ではないような一種異様な雰囲気があり、
初めて見た時は少し驚いた。

図鑑には夜行性であるように記されているものの、
私が出会ったのはいずれも暑い日の真昼間である。
手元の図鑑にはまったく生活史が記されていない。
立派だし普通に見られる割には、
あまりまともに紹介されることの少ない種類だ。
色合いが変てこなのが災いしているのかもしれない。


どんじりに控えし
ホソカミキリ Distenia gracilis に至っては、
もうその標準和名からしてやる気が感じられない。
ちょっと細長いからってホソカミキリとは何事っすか。
メガネをかけた人に
「メガネ」とあだ名をつけるようなものである。
いや大概のものの名前ってそうなんだけれども。

図鑑の記述も
「あかりによく飛んでくる、ふつうの種」と
悲しいまでにそっけない。

もっとも私も興味を向けたのは今回が初めてなわけで、
そのような冷淡な態度を責めるいわれはない。
もっと大多数の市井の人々にとっては、
気にも留めない存在なのだし。


昆虫に関する文献は、
なぜか詩人や文学者の手になるものが少なくない。
かの大ファーブルも詩作で知られているし、
彼がしばしば引用するジュール・ミシュレもまた、
歴史家であり文学者であった。
虫プロがかつて製作した長編アニメ
「哀しみのベラドンナ」の原作者は、
他ならぬこのミシュレである。

どくとるマンボウ昆虫記を著した北杜夫は
言うまでもなく作家・詩人であり、
小学館フィールドガイド「日本の昆虫」の三木卓も
H氏賞受賞歴をもつれっきとした詩人だ。

一見取るに足らない虫たちに向けられる
これらのまなざしは、
おそらくは内省的な側面を持っているように思う。
いわば思索者の視線なのだ。

日本に初めてファーブルの昆虫記を紹介したのが、
かの大杉栄であったことを思うと少し興味深い。

かくいう私は詩人でも大それた思想家でも
なんでもないのだが。
ええ、一介の漫画家でございますともさ。
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キマダラカミキリ 8月 東大和市


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キマダラカミキリ 8月 東村山市
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 ホソカミキリ 8月 東村山市

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