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9月 東京都あきるの市

キボシカミキリ      Psacothea hilaris
分布:本州以南


オイスターさんのリクエストにお応えして、
カミキリムシである。
今回はゴマダラ同様に馴染み深い
キボシカミキリ氏にご登場願った。

体型はゴマダラよりややスリム。
身体の倍近い長さの触角と、
チャコールグレーにレモンイエローの斑紋を散りばめた
ツイードのジャケットが粋なおあにいさんである。

粋なのは結構だが、
農業を営む方々の覚えはあまりめでたくない。
彼氏はクワやイチヂクの木が大好きなのだ。

カミキリムシの幼虫は一般に
いまいち気味のよくない頭でっかちの芋虫である。

テッポウムシの異名を取る彼らの離乳食は生木だ。
その辺に生えてる木の幹や枝の中に陣取り、
材部をずんどこ食い進んでゆく。
クワやイチヂクの幹の太さなんてタカが知れている。
中にトンネルを掘られたのではたまらない。
枯れないまでも弱って樹勢が衰えてしまうこと必至。

キボシカミキリはこれらの木の栽培農家にとっては
端倪すべからざる大害虫なのだった。

元々は関東以南に分布していたが、
温暖化の影響か近年は東北にまで
版図を拡げているらしい。

写真でもクワの葉の裏に止まってご機嫌そうである。
もっとも、ひょいと手を伸ばして捕えたら
たちまち不機嫌になった。

カミキリ族は風貌こそいかめしく堂々としているが、
動きっぷりはそうでもない。
通信簿の備考欄に
「落ちつきが足りません」とコメントされる手合いだ。
俺だよそれ。

ゴマダラの項に、
首根っこを抑えるときいきい喚くと書いた。
カミキリ全般が必ずしもきいきい言うわけではなく、
現にこのキボシ君は悲鳴は上げなかった。

しかし声にこそ出さないが、
手足をぶんぶん振り回して盛大に苦情を申し立てている。
ボディランゲージである。
言いたいことは伝わったのでとりあえず放免する。

放された後がまた大騒ぎだ。
足は長くてカッコいいものの、
オサムシやハンミョウのようにスマートには扱えないらしい。
どったどったと慌てて歩くスピードは、
デジカメで撮るのが難しい程度には早いが、
逃げ足としてははなはだ遅い。

彼自身もこれはまずいと思ったのか、
ぱさっと翅を開き、おもむろに飛び立った。

そんで私のTシャツに止まった。

何してんねん、キミ。

業を煮やして再度ひっとらえると、
Tシャツの生地に噛みついて頑強に抵抗する。
穴が開くから放さんかい。

ひと悶着の末、
ようやく胸から引っぺがして葉の裏に戻してやった。
彼氏も長い触角を振り立てて
鷹揚に満足の意を示したものである。

キボシカミキリの鮮やかな黄色い斑紋は
生時のものだ。
息絶えてしまうと白っちゃけてその輝きを失ってしまう。
これはトンボの美しい複眼もそうだ。

だから標本写真だけでは、
その姿を本当に知っているとはいえない。

天然ボケのキボシカミキリの背は、
残暑の太陽に映えてまばゆく輝っていた。
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放せやボケェ
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9月 東京都あきるの市

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