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10月 あきるの市

キイロテントウ  Illeis koebelei
分布:北海道・九州・南西諸島

小さい小さいテントウムシだ。

頭からお尻までの体長は4〜5ミリ。
普通のテントウムシの約半分である。
しかもテントウムシは丸い。
丸いものは長さより面積で大きさを比較してしまう。
するとキイロテントウは、
並のテントウムシの
ほぼ1/4の大きさしかないことになってしまう。

色彩こそ艶々した目立つエナメルイエローだが、
あまりにちっこいので気づかれない。
しかし気づかれない割には、
私のような図鑑の虫にはなじみの昆虫だったりする。
その理由については後述するとして。

いつもの撮影地に向かう途中の道に小さな栗畑がある。
夏場は花の強い匂いに誘われる虫たちで
大変に賑わう場所だ。
スズメバチなんぞもお越し下さるので
あまり長居はしないのだが。

秋になれば結実し、地面は栗のいがいがで覆われる。
樹上に実った栗に見とれていたら、
すぐそばの葉陰にハラビロカマキリがいるのを見つけた。
ちょっかいを出してみたらあっさり隠れてしまった。
喧嘩する気分ではなかったものとみえる。

そんな栗畑の縁に、一本の大きな桑の木があった。
なにげなく見上げると、
葉の上に小さな黄色い点があるのが目に入った。
お。キイロテントウじゃん。

さては、と思って葉をめくってみると、
裏側が粉を吹いたようにまだらになっていた。
まごうかたなきうどんこ病の症状だ。
カダンAを使っていないに違いない。


キイロテントウがよく知られているのは、
その一風変わった食性によるものだ。
この小さいテントウムシは、
うどんこ病菌を食べて生きているのである。

テントウムシ類の多くは
アブラムシやカイガラムシを食べている。
しかし中にはジャガイモの葉を食べるニジュウヤホシや、
ウリ類の葉を食べるトホシテントウなどもおり、
食性は結構多岐にわたっている。
そんな中、本種キイロテントウは
うどんこ病菌(白渋病菌)などをはじめとした、
菌類を主食としている変わり者なのだ。

農家にとっては農作物の病気は死活問題である。
やっかいな病菌をせっせと駆除してくれるキイロテントウは、
アブラムシ退治のテントウムシ同様に
ありがたい正義の味方なのであった。

このため、この小さな働き者は
大概の昆虫図鑑で好意的に紹介されている。
私たちが顔なじみになっている道理なのだった。


粉を吹いた桑の木のあちこちに、
黄色いユニフォームのレスキュー部隊は止まっていた。
高いところにはさなぎらしい抜け殻も見える。
テントウムシ類は
成虫と幼虫の食性が一致しているものが少なくない。
キイロテントウの子供たちも、
親と一緒に粉々した菌類を食べているのである。

一匹を手の上に落としてみた。
キイロ君はナナホシのように落ち着いてくれず、
小さい体で私の掌をちょこまかと駆け回る。
胸板には眼とほぼ同じ大きさの黒斑が2つあり、
正面から見るとちょっと四つ目のようだ。

ひとしきり遊ばせた後に桑の葉の上に戻し、
私も道に戻った。

すぐそばの電信柱の上では、
モズがごちょごちょと何ごとかくっちゃべっている。

よく晴れた10月末の真昼頃。
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白い粉のうどんこ病



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10月 あきるの市

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