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7月 東京都あきるの市

キタテハ       Polygonia c-aureum
分布:北海道南部〜種子島


タテハチョウというからには
翅を立てて止まるのかと思えば、
意外と開いている。
というより、開いたり閉じたりしていることが多い。

大好きな樹液を吸いながら、
ゆっくりと開閉させているさまは
どこか満足気にみえる。

左の写真と右上のそれは同じ蝶だ。
カナブンやハナムグリと一緒に
樹液の酒場を楽しんでいる最中である。
酔っぱらってるのか
枝の周りを頻りにぐるぐると歩き回るので、
撮影には少々手こずった。

ところで右下の写真をご覧頂きたい。
キリンソウの花にとまっている蝶は、
上の写真とはずいぶん翅の色が違う。
違うのだが、やはりこれも立派なキタテハだ。
生物には人間をはじめとして
雌雄で見てくれが違うものが少なくないが、
キタテハの場合は差はあまりない。
にも関わらず、上の蝶と下の蝶はほとんど別物にみえる。

同じ蝶なのにこんなに風貌が異なるのはどういう訳か。

ここはひとつ撮影月をご覧頂きたい。
上は7月で、下は11月の撮影になっている。

カブトムシやスズムシを飼ったことがある人なら
ご存知だろうが、
昆虫の成虫が見られるのは
だいたい1年に1シーズンである。
カブトムシやセミなら夏だし、
スズムシやコオロギなら秋だ。

ところが中には年に何回かに分けて
発生するものがいるのだ。
殊に蝶の仲間では珍しくなく、
既に紹介したアゲハチョウもそうである。
アゲハの場合は春と夏の2回羽化のシーズンがあり、
春型と夏型では微妙にデザインが異なる。

キタテハではこれが夏と秋の2回になり、
夏型と秋型の差が激しいのだ。

夏型は上に示したように若干黒ずんだ色調を帯びる。
これで黄色のタテハと言われてもピンとこないが、
秋型のそれを見れば納得がゆく。

ここでもう一度右上の写真をご覧頂きたい。
翅の裏側の中央やや尾よりのところに、
小さな白い模様があるのがお分かり頂けるだろうか。
(拡大図参照)
分類学ではこれをCの字に見立て、
キタテハとシータテハの特徴としている。
この2種類は特に秋型が非常に似ていて紛らわしい。

ちなみにシータテハはC字紋があるのでシータテハなのだ。
L字型の模様のあるエルタテハもいる。

これら樹液を好む蝶たちは、
小さい頃クワガタ捕りの際にさんざんお目にかかっている。
当時はもちろんクワガタやカブトに夢中で、
蝶々のたぐいは気にも止めなかった。

歳くった現在、かつて見なれた風景が
また別な興味深さをもって目に入ってくるのは
なかなか愉しい。

これからの季節、
スズメバチがおっかない風景でもあるのだが。

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C字紋拡大
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11月 東京都江戸川区

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