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どうでもいいが今回調べてみて、 世間には「優曇華」っつう名前のうどん屋が 相当数存在することを知った。 安易だぞ皆。 日本では古来、本種クサカゲロウの卵を 優曇華の花とみなしてきた。 卵は木の葉の縁などに産みつけられる。 1センチ弱の細い糸の先に、 小さな白い楕円形の粒がぶらさがっているものだ。 だいたいある程度の本数が集まっており、 暖簾よろしくゆらゆらと風に揺れている。 なかなか幽玄な眺めである。 写真をお見せしたいところだが、 残念ながら現在ストックがない。 つっても決して珍しいものではなく、 昔は部屋の蛍光灯などからも無造作に生えていた。 三千年に一度の開花が公務員宿舎の四畳半では、 少々ありがたみに欠ける。 我々の祖先は天竺よりもたらされた伝説が 気に入ったようで、 クサカゲロウの卵以外にも 優曇華の花と呼ばれているものがいくつか存在する。 バナナの花なんかもそのひとつで、 わが国では珍しいことから ウドンゲ扱いを受けていたらしい。 しかし不思議なことに、 日本における優曇華の花は凶兆だった。 昔の人々は、 梢に産みつけられたクサカゲロウの卵を見ては、 やがて訪れるであろう天変地異や災厄に 恐れおののいていたのである。 このようなネガティヴな発想は、 荒ぶる神(=自然)のタタリを畏れて崇め敬う、 原始日本の宗教観に由来するのかもしれない。 おお、何だかアカデミック。 私自身はどちらかといえば 親のクサカゲロウの方が好きである。 夕方電車に乗っていると、 明かりに惹かれたこの虫がふらりと入ってくることがある。 大きさは1〜2センチ程度。 手すりなどに止まり、翅を畳んで静かに休んでいる。 驚かせないように近づけば、 その大きな複眼が スパンコールの虹色に煌いているのに気づくだろう。 繊細な翅の萌黄色と相俟って、 たおやかな美しさを醸し出している。 なにやら深窓の令嬢っぽくもあり、 カゲロウの名前もあって はかない印象を持ってしまう人も多いようだ。 だが、クサカゲロウは アリジゴクの親であるウスバカゲロウ同様、 カゲロウ目ではなく脈翅目に属する昆虫である。 口を持たず何も食べないカゲロウと異なり、 アブラムシやカイガラムシを狩って餌にしている。 むやみに捕まえると悪臭を放ったりもするらしい。 とんだじゃじゃ馬娘だ。 ところで振れなば落ちん風情の大和撫子お嬢様は 私の好みではない。 見てくれの割に食えない相手の方が 歯ごたえがあってよろしい。 いや、観賞する分にはの話ですが。 |
6月 東京都西東京市 |
6月 東京都西東京市 |