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8月 東京都あきるの市

ミヤマアカネ  Sympetrum pedemontanum elatum
分布:日本全土

ミヤマシリーズ第2弾。

漢字で書けば深山茜であるが、
むしろ平地で見られることは
ミヤマカミキリの項に記した通りである。

以前も述べたように
トンボ類の生息域は幼虫であるヤゴの生息域に等しい。
ミヤマアカネの子供たちは、
水田の周りを流れる
穏やかなせせらぎなんかが大好きなのである。
従って親御さんもそういった辺りを好んで飛んでるって寸法だ。

ところで写真には逆立ちしているトンボが写っている。

飛びながら食事し恋をして産卵するトンボが
止まっている時ってのは、
まず休息を取っている訳だ。
だのにこのようなポーズで休めるとは思えない。
足を突っ張って
「ふんっ」と背筋でお尻を持ち上げている様子は、
緊張感に満ちている。

緊張しているのも道理で、
これは彼らの警戒の姿勢なのである。


昆虫写真を撮る時は、
寄りながら一枚また一枚とシャッターを切ってゆく。
逃げられる寸前まで近寄り続けるのだ。
従って緊張の度合は次第に高まってゆく。
ミヤマアカネのお尻もどんどん高まってゆく次第である。

トンボの眼鏡は童謡に歌われるほど大きく、
またぐるぐるとよく動く。
とはいえ彼らの本領は捕食者であり、
視界は前面に広い。
このため背後から近づく分には意外と警戒されない。
2枚目や4枚目の写真が比較的普通に写っているのは、
このためである。

だが、撮影者が横や前面に回れば
当然彼らの視界に入る。
危険を察知したミヤマアカネは足をしっかりと踏ん張り、
アクロバットなしゃちほこ立ちを始めるのだ。

このような警戒ポーズは
ミヤマアカネの専売特許ではなく、
他にもいくつかの種類で確認されている。
ただ、私の身の周りでは
本種の印象がもっとも強い。
それゆえ私にとってミヤマアカネは
しゃちほこ立ちをしたトンボなのである。


アカネの名があるように、
本種はいわゆる「赤トンボ」の仲間だ。
図鑑には全身が見事な紅色に染まった写真が
紹介されている。

しかし残念ながら私はまだ
赤いミヤマアカネに会った経験がない。
本種が色づくのは秋である。
涼しくなってから夏に見かけた場所に足を運んでも、
なぜか彼らの姿は見られないのだ。
トンボの仲間には成熟すると
場所を移動してしまうものも少なくないので、
ミヤマアカネたちも
秋風が立つ頃にどこかに行ってしまうのかもしれない。


似た種類が多くて
見分けるのが大変なトンボ類にあって、
本種の同定はむずかしくない。
ポイントは翅の独特の模様だ。

ノシメトンボやマユタテアカネ、リスアカネのように
翅の縁が褐色に染まるものは少なくないが、
先端から少し離れて帯状に模様が入るものは、
国内ではミヤマアカネと
コフキトンボの一部の個体変異のみである。
ちょっと小型戦闘機じみており、
男の子の心をくすぐるデザインだ。

決して珍種というほどのトンボではないが、
たまに出くわすとちょっと嬉しくなる。

そんなミヤマアカネである。
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出初式




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 7月 東京都昭島市

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