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8月 東京都あきるの市

ミヤマカミキリ  Massicus raddei
分布:日本全土

プラットホームに虫が落ちていた。

コフキコガネの項でも述べたように、
その辺に落ちている虫というのは珍しくない。
本人は留まっているつもりなのかもしれないが、
傍目には落ちてるようにしか見えないのだから仕方がない。

今回の墜落者はミヤマカミキリだった。
子供の頃にしばらく飼ったこともある馴染みの顔である。

ミヤマと名のつく昆虫や植物は多い。
漢字で書けば深山。

いかにも深山幽谷の生き物っぽくて、
希少価値がありそうな気配である。

しかし実際は意外とそうでもない。
近々紹介する予定のミヤマアカネなどは、
山地よりも平野や里山で飛んでいるトンボである。

本種ミヤマカミキリも名前だけ深山の類で、
一昨年の夏にはウチの玄関の前に落ちていた。
曲がりなりにも山手線の内側なんですけど。

もっともカミキリに限らずセミだの蛾だのは
普通に落ちているし、
近所でコウモリを拾ったこともある。
「東京には自然がない」などとお嘆きの向きは、
ちったあ目を明けて周りを見て欲しいものだ。

どうせ彼らにとっての自然とは、
単にレジャーとしての自然環境なんだろうけど。


本種のような中〜大型のカミキリは、
静止している間はあまり周囲を警戒しない。
このため捕えるのは異様に簡単である。
とにかく強大なあごで噛まれないように
注意だけしていればよろしい。

ただし捕獲後の抵抗はかなり激しい。
カブト・クワガタ類ほど力は強くないので
どうってことはないものの、
とにかく足をぶんぶん振り回して首と胸をよじり
きいきいと悲鳴を上げる。

つい今しがたまで
あれほどどっしりと鷹揚に構えていたのが、
一瞬にしてじたばたきいきい暴れ始めるさまは
何やら見苦しいまである。
そんなに大騒ぎするくらいなら
最初から逃げろっつの。


虫が地面に落ちている理由はさまざまだ。
弱って墜落している場合も少なくない。
一方で単にたまたま地べたに着地してしまったか、
もしくはどこかにぶつかって
落っこちてそのままになっているケースも多い。

駅の階段の下に陣取っていたミヤマカミキリは、
何となく日陰だったので涼を取っていた風情であった。
そこを拉致されたのだから
さぞかし心外だったに違いない。
暴れっぷりもひとしおである。

撮影後にアスファルトに下ろしてやると、
例によってあたふたと走り出した。

キボシの項で書いた通り、
カミキリ類は一般に素早い動きは得手ではない。
長い足を持て余すように振り回し、
どたばたとなぜかこちらに向かってくる。

黙って見ていたら靴の横に辿りつき、
安心したように動かなくなってしまった。
どうやら陰に入ったので
敵の目を逃れおおせたと考えたようである。

いや君、それ敵の足の陰やで。

ゆっくりと足を引いたら、
ミヤマ君はびっくりして再び駆け出した。
結局もう一度捕まえると、
駅舎の陰に放してやったのだった。


本種は夜行性のカミキリである。
撮影時刻は午後1時頃。
彼にとっては真夜中、つーか真昼中もいいとこだ。
多少寝惚けていたのかもしれない。

それにしても、
黙ってると堂々とした風格のある虫なんだがなあ。
miyamakamikiri0803_2.jpg (17027 バイト)
あたたた
miyamakamikiri0803_3.jpg (14318 バイト)
きいきい



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 8月 東京都あきるの市

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