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8月 東京都練馬区

モノサシトンボ  Copera annulata
分布:日本全土

アオモンに続き、イトトンボシリーズ第2弾である。

物差トンボとはよく言ったもので、
細長い胴体にはスケールが打ってある。

全長4〜5センチってことは、
ひと目盛り大体6、7ミリか。
残念ながらちょっと半端である。
ちょうど1センチとかだと判りやすくて良かったのに。

以前、イトトンボ類の同定はややこしいと述べたが、
モノサシトンボはこの薄青い目盛りが目印になるため
すぐに判る。
大きさもこの仲間としてはでかい方だ。
おかげでピント合わせが比較的ラクだった。

同じ水辺のイトトンボでも、
本種とアオモンイトトンボやアジアイトトンボとでは
生息域が異なる。

アオモンたちが比較的開けた明るい池沼を好むのに対し、
モノサシは周りが林に囲まれたりして
やや暗い水辺をふらふらと漂っている。
そのせいか印象もいまいち地味だ。

ここに紹介した写真も日陰での撮影である。
背景は明るく晴れているにもかかわらず、
わざわざ陰になったシロヤマブキの葉の上に
足を踏ん張っている。

よく見ると踏ん張った足元が白い。
ハイソックス気分だ。
これはモノサシトンボ科の雄の特徴のひとつである。


同科に属する変わり種に、
グンバイトンボ Platycnemis foliacea sasakii がいる。
問題のハイソックス部分が流線型に膨らんでおり、
行司さんとかの使う軍配に似ていることから
付けられた名前だ。
写真でみるとその籾殻のような足元が
いかにも邪魔くさげであり、妙な生き物である。

モノサシはいたって普通種だが、
湧水池を住処とするグンバイは
全国的にその数を減らしている。
東京都レッドデータブック(1999)でも、
都区部ではすでに絶滅、
多摩地区で絶滅危惧種の指定を受けている。
私もいまだにお目にかかったことはない。

今回の撮影地である石神井池も、
かつては数少ない
グンバイトンボの生息地として知られていた。
もちろん現在はまったく確認することはできない。


とはいえ、石神井池自体には
まだまだ色濃く自然が息づいている。
ボート池を覗き込めばスジエビの群れが踊る。
休日になれば朝から釣り人が並んでいるように
魚影も濃い。
スッポンや水底に休むライギョの姿を窺うこともできるし、
運がよければカワセミの翡翠色の光跡に出会える。
散策路脇のクヌギの影では、
カブトムシの雌が樹液を啜る。

この幽玄なモノサシトンボも、
そういった石神井の添景のひとつなのである。

アップでみると何だか毛深いオッサンみたいだが。
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眼が離れてまーす



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 8月 東京都練馬区

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