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8月 東京都八王子市

ナナフシモドキ      Baculum irregulariterdentatum
分布:本州・四国・九州


モドキとあるが、別にニセモノではない。
立派にナナフシの仲間である。

ナナフシといえば本邦の擬態昆虫の王様だ。
確かに前足をいっぱいに伸ばして樹木に止まっているさまは
枝そのものである。
どうもその印象が先行して、
大変見つけにくい相手だと思われている節がある。

しかし実際には、
ナナフシは大した苦労もなく見られる昆虫のひとつである。
生息数が多いのだ。

殊に撮影地である高尾山では
シーズンには相当数が見られる。
晩春に訪れた際には
生まれて間もない子供たちに出会った。
せわしなく長い前足を振り動かして踊っていたものである。

もちろん気をつけなければ見落とすかもしれないが、
それは何もナナフシに限った話ではない。

小学生の頃、初めて出会ったのもやはり高尾山だった。
巨大なスギの幹のど真ん中に張り付いていたのである。

いかな擬態の王様といえど、
緑色の枝が茶色い幹の中央に生えていたのでは
あからさまに不自然というものだ。
くくく。オロカモノめが。
ほくそ笑みつつ直ちに捕獲した。

捕獲したはいいが、
私はこの太さ数ミリ程度の昆虫を、
あろうことかプラスチック製の虫かごに投入したのである。
かごの網の目は優に5ミリはあった。

しばらく歩いて気がつくと、
虫かごは空になっていた。

まったく隙間から落っこちてしまったに相違ない。
オロカモノは私の方だっつの。

ちなみに高尾山は国定公園であり、
動植物の採集は禁止されております。念のため。

ナナフシモドキは女系の一族である。
メスだけしか知られておらず、
彼女たちはオスの手を借りずに卵を生む。
このように単一の性だけで繁殖することを
単為生殖と呼び、
生物界ではまま見られる現象である。

ナナフシの卵もまた変わっている。
フタのある壺というか湯呑そっくりなのだ。
茶碗蒸しの器を想像して頂ければよい。
模様など入っていてなかなかお洒落である。
機が熟すると子供らはフタを開けて現れ、
前足を振り振り散ってゆくのであった。

先般、気の合った友人たちと高尾に赴いた。
野草園を散策中のことである。
草花を愛でていた女性に、
園丁とおぼしきダンディなおじさまがプレゼントしたのが
この虫であった。

「『きゃー』って反応を
期待してたのかもしれませんけどねえ」

幸か不幸か昆虫好きである彼女は
うっかり喜んでしまったのだった。

貢物にされたナナフシモドキはもそもそと身体を揺すり、
やや不満の体であったが。
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8月 東京都八王子市

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