小学館「日本の昆虫」では
「熨斗目蜻蛉」と漢字が当ててある。
熨斗は贈答品にくっついてるアレで、蜻蛉はトンボだ。
ある説に従えば、
これはこの虫の腹部の黒い斑紋を
「のしめ模様」に見立てたことに由来するのだという。
江戸時代にそういう名前の模様があったそうだノシ。
知らんかったノシ。
知らんなりになんとなく納得しかけると、
例によって異説があるので油断がならない。
他の有識者の主張するところに拠れば、
ノシメの語源は「のし面」だというのである。
この場合の「のし」はのしいかのそれに等しい。
のした面、すなわち顔が平たいという意味だ。
なかなか失礼な命名ではある。
だいいち、ぱっと見て
彫りの深さが気になるようなトンボの顔でもあるまい。
それでも個人的には後者の説の方が
なんとなく馴染む。
のしめ模様より
のしいかの方が身近なのだから仕方がない。
ごたくを並べてはいるが、
私がこの身近な虫の名前を認識したのは
せいぜい数年前である。
それまではやはりイノセントに
「あー、赤とんぼ」と思っていた。
ナツアカネやアキアカネに比べて
羽の先が濃色なのは気付いていたが、
それ以上の詮索をしなかったのだ。
別に詮索しなくてもいいとも思う。
でも、知ってみれば何か少し得したような気になる。
世の中まだまだ知らないことがいっぱいあると思えば、
結構日々楽しめるかな、と。
成虫は6月くらいから見られる。
ただし既に紹介したアキアカネ同様、
夏は山の方で涼んでいる。
平地で彼らの姿を見かけるようになれば、
秋も近い。 |