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8月 東京都千代田区

サトキマダラヒカゲ       Neope goschkevitschii
分布:九州以北


耳慣れない名前だが、特に珍しい虫ではない。

サトキマダラヒカゲはヒカゲチョウの仲間である。
名前はサト・キマダラ・ヒカゲと分けるのが正しい。
里に住む黄色のまだらのあるヒカゲチョウだ。
漢字では里黄斑日陰と書く。

山に行くと今度はヤマキマダラヒカゲなる蝶がいる。
以前は同じ虫だと思われていたが、
研究の結果別種だということになり
サトとヤマに分けられたのである。
この手の細かい分類は、
一部の研究者には重要かもしれないが
まず我々にはどうでもいいことだ。

8月の雑木林に汗を拭きながら足を踏み入れる。
陽射しは生い茂った葉に遮られて
林の奥までは届かない。
フィトンチッドなどを満喫しつつ、薮蚊を払いながら歩いて行くと
1メートルくらいの高さのところをふらふらと飛んでいる蝶がいる。
いかにもやる気なさげに鱗翅をばたつかせている、
この虫独特の飛翔である。

立ち止まって眼で追ってゆくと、
さして遠くまで行くこともなくその辺の幹に止まる。
樹液を探しているのだが、
どうも一直線に目的地に向かうのは面倒なので
ちょくちょく休みながら飛んでいるようなのだ。

そんな訳で本種は樹液に集まる蝶である。
カブトムシやカナブンが樹液に集まっている写真の端の方に
「お流れ頂戴」といった塩梅で写り込んでいるのをよく見かける。
樹液の酒場の話はいずれカナブンの項でするつもりだが、
蝶はお店の常連客では発言権の弱い方に属する。
気の荒い甲虫類の眼をかすめてストローを伸ばし、
一杯引っかけてほろ酔い気分でまたふらふらと飛んで行く。

昆虫好き、いわゆる虫屋は
雑木林でサトキマダラヒカゲを見かけると黙って後をついてゆく。
樹液のあるところに連れていってくれるからだ。

千鳥足でちょっと頼りない、森の案内人である。

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