8月の雑木林に汗を拭きながら足を踏み入れる。
陽射しは生い茂った葉に遮られて
林の奥までは届かない。
フィトンチッドなどを満喫しつつ、薮蚊を払いながら歩いて行くと
1メートルくらいの高さのところをふらふらと飛んでいる蝶がいる。
いかにもやる気なさげに鱗翅をばたつかせている、
この虫独特の飛翔である。
立ち止まって眼で追ってゆくと、
さして遠くまで行くこともなくその辺の幹に止まる。
樹液を探しているのだが、
どうも一直線に目的地に向かうのは面倒なので
ちょくちょく休みながら飛んでいるようなのだ。
そんな訳で本種は樹液に集まる蝶である。
カブトムシやカナブンが樹液に集まっている写真の端の方に
「お流れ頂戴」といった塩梅で写り込んでいるのをよく見かける。
樹液の酒場の話はいずれカナブンの項でするつもりだが、
蝶はお店の常連客では発言権の弱い方に属する。
気の荒い甲虫類の眼をかすめてストローを伸ばし、
一杯引っかけてほろ酔い気分でまたふらふらと飛んで行く。
昆虫好き、いわゆる虫屋は
雑木林でサトキマダラヒカゲを見かけると黙って後をついてゆく。
樹液のあるところに連れていってくれるからだ。
千鳥足でちょっと頼りない、森の案内人である。 |