生息数も似たり寄ったりで、
私の経験からいえば
樹液周辺で見かける数はカナブンに次ぐ。
虫採りの子供たちには見慣れた当り前の顔のひとつだ。
しかし雑兵のたぐいと思って舐めてかかると、
なかなかどうして奥が深いのがハナムグリの一族。
シロテンハナムグリには国内にそっくりの双子、
いや四つ子の兄弟がいる。
中でもシラホシハナムグリProtaetia brevitarsis は
姿形といい名前といい紛らわしいことこの上ない。
始末の悪いことに分布域もかぶっており、
激しく混同されている。
これらの正確な同定は背中の斑紋に頼るしかない。
私なんかは野外で見かけると
反射的に「あ、シロテンだ」と思ってしまうのだが。
まあ別にそれで問題はないんだろうけど。
普通種ではあるが、
シロテンハナムグリは非常に美しい。
鞘翅の金属光沢はカナブンに勝る。
真夏の雑木林の中、
木漏れ日を浴びた背中は
光の角度によって複雑な色彩を帯びて輝く。
写真でグリーンがかってみえるのは、
木々の葉の緑を反射しているためだ。
ハナムグリの仲間は世界中に相当数が分布しており、
近年は規制緩和で外国産のカッコいい連中が
輸入されるようになった。
中でも世界最大の甲虫類である
ゴライアスオオハナムグリは有名だ。
本邦にもオオチャイロハナムグリをはじめ
美麗種や稀産種が産し、マニアの人気は高い。
右の写真では少し顔が見えている。
カナブンのように四角くなく、丸っこい。
足元に見えているのはやはり樹液中毒者の
ヨツボシケシキスイ。
樹液の香り高い夏の森は愉しい。 |

シロテンハナムグリとシラホシハナムグリの斑紋
原図「標準原色図鑑全集2・昆虫」保育社,1966) |