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7月 東京都町田市

ショウジョウトンボ      Crocotemis servila
分布:本州〜南西諸島


猩々は酒呑みの妖怪である。
飲んだくれなのでいつも顔が赤い。

ショウジョウトンボはびっくりするほど赤いトンボである。
世の中に赤とんぼは数あれど、
こんなにも見事に全身が鮮紅色に染まるものは稀だ。

赤くないのは透明な薄い翅だけで、
それとても身体の色味を映して茜色に輝いている。

特筆すべきはやはり顔まで真っ赤なことだろう。
トンボ類特有の、
飛行中の獲物を目視する巨大な複眼すらも
深紅に彩られている。

殊によると充血してるのかもしれない。
猩々蜻蛉とはよく言ったものである。

ちなみに雌はあまり飲んだくれではないようで、
くすんだ黄色味を帯びた程度らしい。
らしい、というのは本の受け売りだからである。

何しろくすんだ黄色の雌トンボは、
シオカラの雌であるムギワラトンボをはじめとして
むやみに種類が多い。
いちいち捕まえるか写真に撮るかして同定しなければ
どれが何トンボやらさっぱり判らないのだ。

いずれにせよ本種の女性が
キッチンドリンカーでないのは確かである。

以前、赤トンボ類はたいがい
おとなしくモデルをやってくれると記したが、
ショウジョウトンボに限ってはそうでもない。

他のトンボ同様、彼らも決まったルートを巡回して
時折休息を取る。
そこを狙って近づくのだが、
なかなか至近距離まで寄らせてくれない。
一瞬の動きを読んでさっと飛び立ってしまう。
その動きはかなり敏捷だ。
飲んだくれのくせに。

どうせ戻ってくるだろうと網を張っていると、
向こうの方で止まってしまったりもする。
ここに紹介した写真でも
あちこちに止まっているのがお分かり頂けよう。
相手は全部同じ野郎である。
おかげで撮影には少々手を焼いたが、
つい美しさに惹かれて粘ってしまった。

その鮮烈な原色に相応しく、
ショウジョウトンボは広く熱帯アジアに分布している。
本州では4月〜10月頃、
南西諸島では冬でも
この空とぶ紅玉を目にすることができる。

我々が平地で彼らに逢えるのは、
7、8月の水辺が多い。

シオカラやギンヤンマの青さと好一対をなす、
盛夏の水面を彩る涼景である。

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7月 東京都町田市

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