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8月 東京都調布市

ツクツクボウシ      Meimuna opalifera
分布:北海道〜屋久島


西川のりおのネタを持ち出すまでもなく、
夏の暑苦しさを代表するセミである。

本種最大の特徴であるその鳴き声は、
アブラゼミと並んで
日本の夏の蒸し暑さをバージョンアップしている。
あまりのことに苦沙弥先生ん家の猫も
惜しいつくつく野郎と罵倒して憚らないくらいだ。

ツクツクボウシが他種と一線を画するのは、
ご存知のように
その奏でるメロディにエンディングがある点だ。

ツクツクボウシの声はだいたい
「ツクツクオーシ」であり、
ツクツクはちょっと前打音っぽい。
アクセントはオーシの部分にある。
なるだけ景気良く「オーシ」と言うために、
口の中でツクツク呟いている感じだ。

それかあらぬか、鳴きはじめはツクツク部分が長い。

ツクツクツク オーシ ツクツクツク オーシ

いわば助走である。
乗ってくるに従い、オーシが長くなる。

ツクツクオーーシ ツクツクオーーーシ

さあ調子が出て来た。耳の穴かっぽじって聴け皆の衆。

ツクツクオーーシ ツクツクオーーシ
ツクツクオーーシ ツクツクオーーシ
ツクツクオーーシ ツクツクオーーシ
ツクツクオーーシ ツクツクオーーシ

そしてひとしきり喚き散らした後、
おもむろに後奏に入る。

ツクツクオーシ ツクツクオーシ
ツクツクチーヨー ツクツクチーヨー ツクツクチーヨー
チチチチチチチッ

これにてツクツク君の独唱は終了する。
鳴く虫は数あれど、
曲の終わりを予告する歌い手は珍しい。
アンコールの催促でも待っているのだろうか。

もっとも途中で邪魔が入ると、
迷惑そうに「ジッ」と言って止めてしまうこともある。
なかなか気難しいソリストなのだ。

ところで白状すると、
本欄でさんざ偉そうなことを書いてる私だが、
ツクツクボウシの外観はいまいち把握していなかった。
声はすれども姿は見えず。
かしましく喚き散らす歌い手の
所在がさっぱりわからないことが多かったのだ。
今夏ツクツクボウシの非常に多い林を訪れた際、
声の出所を探してやっと見つけ出した次第である。

初めて認識した惜しいつくつく野郎は、
その鳴き声に反して意外にも楚々とした姿をしていた。
体長は3センチ前後、ニイニイゼミより少し大きいくらい。
色調は控え目で上品、
すらりと長く伸びた透明な翅と胴体とのバランスが良く、
かなり均整のとれたフォルムである。
ほっそりした身体つきはたおやかな雰囲気すら漂う。

やかましいオバチャンがおるなあと思って顔を見たら
深窓の令嬢風だったようなもので、
なんだか妙な気分になった。

近くには幼虫の抜殻があちこちにしがみついていた。
やや小ぶりで薄い色合いは、
羽化した成虫の姿に相通ずるものがある。

姿を知ってみると、
なんとなくあまりうるさい気がしなくなったのは。

見た目って大事なのね。
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8月 東京都調布市

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