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クリソコラ(珪孔雀石) Chrysocolla (Cu,Al)2H2Si2O5(OH)4 *n(H2O) |
box.1で少し紹介したクリソコラの これがまず典型的な標本である。 稀産という訳ではないのだが、非常に人気が高いために すぐに店頭から姿を消してしまう。 求めやすい価格で美しいためだろう。 ただしこれがアメリカに行くと立派な宝石扱いになり、 重さもグラムやポンドではなく カラットで取引されているというから驚きだ。 鮮やかな水色の部分がクリソコラである。 肉眼で見えるような結晶を示すことは殆どなく、 塊状や皮膜状での産出が多い。 と言うとちと地味な感じだが、 本鉱は石英やオパールと共産することが多い。 写真の白くキラキラした部分が石英というか水晶である。 市場ではこのタイプの標本が最も好まれ、また美しい。 本鉱自体は柔らかくて 加工や研磨にはあまり適さない。 石英と混ざっているものの方が 加工しやすく、また人気も高いのであった。 |
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白鉛鉱 Cerussite Pb(CO3) |
これまた非常に人気の高い鉱物である。 正体は鉛の炭酸塩なのだが、 屈折率が高く清楚な輝きを放つ上に 鉛の鉱物だけあって比重が高い。 ずしりと手に感じる重さが この鉱物の存在感をより一層際立たせているように思う。 結晶しやすい性質があり、 またさまざまな形で双晶をする。 写真の雪の結晶のようなものは、 3つの板状結晶がルチルのように星型に交わり(3連双晶)、 それが繰り返された結果、 出来あがった造型である。 考えてみれば雪の結晶も自然の造型なのだから、 鉱物界にも同様の芸術家が存在してもおかしくはない訳だ。 |
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草入水晶(石英) Rock Crystal (Quartz) SiO2 |
草入と言っても本物の草が入っている訳はない。 草のように見えるインクルージョンを含む水晶を このように呼んでいるのである。 写真の標本の「草」の正体は判らないが、 深い緑色が苔のような風情を醸しだし なかなか味わい深い眺めである。 水晶を好む人はひとり鉱物マニアに留まらない。 宗教家から水石の愛好家に至るまで幅広いファン層がある。 日本における鉱物収集は 20世紀以降の舶来の趣味だが、 水石や美石は古くから通人の観賞の対象になっていた。 このようなお店を覗いても別に鉱物標本は見当たらないが、 水晶なら御馴染みの玉から原石に至るまで なかなかな品揃えを見ることができる。 草入水晶や山入水晶に関しては、 そういう場所の方が ミネラルショップよりも 素晴らしい品に出会えたりもするものだ。 但し美石店の品は決して標本ではなく あくまで飾り石、観賞用なので それなりの支出は覚悟しなければならない。 骨董品と紙一重の投資になる。 写真の標本は母岩を含む大きさが4センチ程度の小さいもの。 実は水晶の母岩つき標本はあまり見られない。 これは採掘者がすぐに母岩を外して 綺麗に洗ってしまうからである。 母岩つきを喜ぶのは我々鉱物ファンだけで、 こと水晶に関していえば、そんな連中は たいして大きなマーケットではないのだった。 |
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白雲母(スターマイカ) Muscovite (Star Mica) KAl2(Si3Al)O10(OH,F)2 |
白雲母は非常にメジャーな鉱物である。 入ってない鉱物標本はないし、 その辺に岩石にも普通に含まれている。 人工的に合成されてアイロンの断熱板や ストーブの窓にガラス代わりに使われていたりもする。 それを今まで紹介しなかったのは、 写真写りがいまいち悪いから、という理由に尽きる。 へき開が非常に完全なため扱いにくい上、 非常に反射が強くてなかなかこれはという画が撮れない。 此度、ちょっと面白い標本を入手したので やっと登場することとなった。 写真の標本はスターマイカと呼ばれるものである。 白雲母が見事に星型に結晶している。 星型や花型や雪型。 自然は実にたくみに美しい形を作り上げるものだ。 これに月でも加わろうものなら宝塚だよ。 |
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アメトリン(石英) Ametrine (Quartz) SiO2 |
紫色の水晶をアメシストと呼ぶ。 対して黄色い水晶をシトリンと呼ぶ。 この2種類が混ざったものが、 ここに紹介するアメトリンだ。 なかなか安易なネーミングではある。 写真は錐面の方向から撮影したもので、 内部で2色に分かれているのがお分かり頂けると思う。 これはひとつの結晶の模様ではなく、 ふたつ以上の結晶がくっついた双晶なのである。 ブラジル式双晶というヤツだ。 組み合わさっているそれぞれの結晶の色が違うため、 このような見た目になる。 煙水晶の項でも述べたように、 有色水晶には人工のものが多く出回っている。 それでも煙水晶やアメシストは天然ものが多いが、 シトリンとなると店頭に並ぶものの殆どは加工品だ。 天然のシトリンは極めて稀産なのである。 一方、比較的多産するアメシストは焼くと黄色くなるので、 これをシトリンと称して売ってしまうのだ。 天然シトリンというふれこみで入荷したものが、 後に熱処理加工品であると判明するケースも珍しくない。 堀先生の鉱物科学研究所でも、 「シトリンに『絶対』はない」と釘をさしている。 信頼できるショップでは加工品である旨を明記して売っているが、 最近のミネラル人気を当てこんで 胡乱な商売をしている店も少なくない。 購入の際には注意もしくは それなりの覚悟が必要である。 そんな次第もあって、 宝石商の店頭に並ぶ美しいシトリンは9割方熱処理品だ。 しかし宝石はそれ自体が既に加工品なので、 あまり目くじらを立てるのもおとなげないというものだ。 アメトリンにも合成品が存在する。 但しこちらは難易度の高い技術が必要とされるため、 却って天然品よりも高価だったりするのだった。 |
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ダトー石 Datolite CaB(SiO4)(OH) |
何かを打倒する訳ではなく、 「分割する」という意味のギリシャ語 dateisthaiに由来する名前である。 特に稀産種という訳でもなく、日本でも産出する。 産状は様々で、結晶の形も比較的バラエティに富む。 色彩も無色から淡緑色、ピンク色に淡黄色と なかなか華やかで美しい。 その割にあまりメジャー感がないのは、 透明〜半透明の珪酸塩鉱物ということで 十把一絡げにされている感じがあるからではないか。 この辺の仲間は魚眼石やダンブリ石、ぶどう石をはじめ まず似たようなたたずまいのものが多い。 おまけに産状が色々となると、 いまいち個性が際立たないのである。 とはいえ個性が云々は観賞する側の問題だ。 写真の標本は4センチ大。 淡い緑色を帯びた清楚な光沢を放つ 美しいものである。 |
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車骨鉱 Bournonite PbCuSbS3 |
車骨とは歯車のことである。 本鉱は写真のように 歯車状のギザギザのある独特の産状を示す。 これは複数の結晶が集まって このような形になっているのだ。 見た目と名前が面白いために人気の高い金属鉱物だが、 弱点は硬度が2.5〜3ときわめて低い点である。 このため、歯車のエッジがすぐに磨耗してしまう。 歯こぼれしてしまうのだ。 稀産ということもあり、良品にはなかなか出会えない。 但し出会ったところでそうむやみに高価なわけではない。 化学組成的には鉛・銅・アンチモンの硫化鉱物である。 宝石にならない類の鉱物で、 貴金属でもないものは それほど値段は高騰しないものなのだ。 |
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インディコライト (リチア電気石) Indicolite(Elvite) Na(Al,Fe,Li,Mg)3B3 Al3(Al3Si6O27)(O,OH,F)4 |
さまざまな色彩で目を愉しませてくれるリチア電気石の、 ブルーのものを特にインディコライトと呼ぶ。 由来はインディゴ・ブルーなのだろうが なぜインディ「コ」なのかは不明。 実際にインディゴライトと呼ぶ場合もあり、 こちらの方が納得がゆく。 もっともリチア電気石自体、 「リシア電気石」としている図鑑も少なくない。 ここでは「リチウムを含む」という意味で リチアの表記を取っている。 ダイアモンドも一般には「ダイヤモンド」と呼ばれるが Diamondという綴りがどうやっても「ヤ」とは読めないので ダイ「ア」としている。 じゃあ野球場のアレもダイアモンドなのか、と言われると やっぱりダイヤモンドなのだけれど。 一貫性がないよ俺。 |
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アルチニー石 Artinite Mg2(CO3)(OH)2*3(H2O) |
繊維状を示す鉱物はこれまでもいくつか紹介してきた。 アルチニー石はその代表格のひとつである。 よく見ると無色透明の針状結晶が 集合して球状になっている。 写真の標本ではあまり針が長くないが、 毛足の長くて密に集合しているものは 優美な絹状光沢を放つ。 名前はイタリアの鉱物学者に因んだものである。 アルチニー石は日本にも産出する。 |
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