REPORT
16回東京国際ミネラルフェア


すんません。今回は黙って行って来ました。
今まで毎度開催前には告知してたのに。
5月末から何か異常なスケジュールに巻き込まれてしまい、
告知のタイミングを逃してしまった次第で。

私自身もう少しで行きそびれるところだった。危ない危ない。
って誰も行ってくれなんて頼んじゃいねえよ。

実は今回、このイベントがちょっと前の「笑っていいとも」で話題になっていた。
年々三倉姉妹に似てくる宮崎淑子がゲストの回である。
あれ、美子に戻したんだっけ。
なんでも宮崎タモリ両氏ともにフェアの常連客であるらしい。
まあ、何となく判らんでもない。

ちなみに宮崎淑子は「やっぱり鉱物好きらしいですよ」と
友達の輪に奥菜恵を呼んだ。
翌日、司会者がミネラルフェアの話を振ったところ、
奥菜嬢がまったく何の反応も示さなかったのはいうまでもない。


それかあらぬか今回のフェアは妙に大盛況であった。
最終日の午後に覗いたらパンフレットが払底していたぐらいである。
入場料の1000円はパンフ代込みなので、
この日は割引で半額で入場できた。
パンフは数日前に既に入手しているので問題はない。ラッキー。

会場は相変わらずフリーマーケット状態である。
各店舗のブースはだいたい例年と一緒だ。
但し中には撤退してしまった業者もある。
撤退の理由はさまざまだが、トラブルによる場合もあるようだ。
パンフにも
「市場の拡大にともなって問題のある品が大幅に増えております」と
恐ろしいことが書かれている。
わかっとるなら何とかせえ、と突っ込みたいところだが、
フリマの主催者にそこまでの管理を求めるのは酷というものだ。

注意書では購入の際に領収書を受け取ることを奨めていた。
うーむ。貰ったことねえな。

しかし信用できる店舗ではレシートはなくとも
言えばだいたい名刺やラベルぐらいは添えてくれる。
控えておきたいものである。

んでは会場内の方を。


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先も述べた通り店の配置は毎回大して変わらない。
従って混んではいるものの大体の勝手は判っている。
正面入り口から入って反時計方向に回るのがいつものルートだ。
お目当ての店の前が渋滞している場合は、
とりあえずスルーして先に別の店を見ればよろしい。
何周かしていれば空いている時に行き当たるものだ。

今回、最終日は寄り合いの流れで友達を数人引っ張って行った。
ここで注意したいのは、
会場内での団体行動は禁物だという点である。
なんせ通路が狭い。
たとえ3、4人であってもひとところに固まっていては
通行の妨げになってしまう。

友人達は幸い皆オトナの人なので
それぞれ好き勝手に堪能してくれた。
ありがたいことである。
私も自由にお目当てを見て歩けるし、
人恋しくなったら合流してゴタクを並べることができた。
能書きを聞かされた方々、すまん。

大人気だったのはおなじみのインドの沸石屋だ。
こんなに混んでるのは初めてみたぞ。
お客の大半は、
テーブルに駄菓子よろしく並べられた水晶細工に
心惹かれているらしい。
考えてみれば原石にジェム、パワーストーンも扱っている訳で
なるほど客層も幅広くなろうというものだ。

インドおじさんも大分商売慣れしたらしく、
売り物に混じって昼飯が置いてあるようなことはなかった。
但し商品の値段と並べ方に無頓着なのは相変わらずで、
800円の標本の横に15万円の結晶が置かれていたりする。
初めて来た友人は「これ、値段違いすぎやしませんか」と目を丸くしていた。

新宿フェア名物、スペインの黄鉄鉱屋は
悲しいことにブースが以前の半分になっている。
っつーか、同じブースに他の店が一緒に出品しているのだ。
よく見たら池袋でアタカマ石を売っていたチリのお店だった。
黄鉄鉱繋がりなのかもしれない。

会場右奥の方のとあるショップでは、
ビン詰めの原油が売られていた。
ただの原油ではない。国産の石油なのだ。

皆さんも社会科の授業で習ったことがおありだろう。
新潟県では石油が出る。
さすがにアラブのような大油田という訳にはゆかないが、
このように売り物になる程度には十分の産出量があるのだった。

国産鉱物を中心に取り扱うこのショップでは、昨年蛭石を購入している。
私たちが原油の話をしているのに気づいたおじさんは、
ラベルを指差すと、
「巨人軍の監督の油なんですよ」と悲しげな顔で妙な冗談を言った。

彼はその後、他のお客と国産の"砂漠のバラ"について話しており、
「バラと言うよりは、砂漠の…ウメボシですね」というコメントが聞こえた。
何か独特のユーモアセンスをお持ちらしい。

まだ続く。

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森田一義氏は化石がお目当てでフェアに足を運んでいるらしい。
気持ちはたいへんよくわかる。

これらの石が万古の歴史を封じ込めているのだ、
などと宮沢賢治的ロマンチシズムに酔いしれても楽しいし、
そうでなくとも造形として化石はじゅうぶん面白く不思議だ。

だいたい骨格が形として残るのは判るが、
柔らかい部分までくっきりと刻印されたりしているのは何故なのか。

そもそも化石は謎がむやみやたらと多い。
なんせ生前の姿を知らない連中の遺物なのだ。

バージェス頁岩生物の代表として名高いアノマロカリスは、
発見当初はそのパーツがそれぞれ別々の生物だと思われていた。
更なる発掘研究の結果、
全長60センチに達する未知の節足動物の姿が浮かび上がったのである。

子供の頃、図鑑にクラゲの化石として紹介されていた標本は
その後の研究で「どうも違うらしい」ってことになった。
ただの模様だという説も有力である。

友人と覗いたショップは、歯の化石専門のお店だった。
ウインドウには大小さまざまな歯が並び、いちいちラベルが添えられてある。
鋭い三角形のそれにはサメの仲間の学名が記されていた。

こんな歯ひとつからどうして名前まで判るのか不思議になるが、
歯の構造は分類学の基本中の基本だ。
殊に絶滅した生物に関しては、
化石として残りがちな歯が分類の決め手とされてきた。
恐竜の名前に「〜ドン」が多いのは、
歯のラテン語である"odon"から来ている。

つっても我々素人が歯の一本くらいを見せられても
ピンと来ないのは仕方がない。
やはり全身か、そうでなくても外観の一部がはっきり判る標本の方に
どうしても目が行ってしまう。

今回印象に残ったのは、白っぽい砂岩に刻まれたエビの姿だった。
うっすらと色まで残っているその様子は、
まるっきり日本画のように見えた。

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どんな分野にせよマニアの物欲は度し難いものだが、
それでも同じものを10個も20個も買い込むことはあまりない。
転売したりヤフオクで一儲けを企まない限りは。

さすがにこれだけ毎年顔を出していると、
目立つあたりに並んでいる手ごろな価格のシロモノは、
結構手持ちのリストに入ってしまった。
もちろん程度の良いものがあれば再度購入してもよろしい。
ダブったものは好きそうな人に譲るなりすればいい訳だし。
しかし程度のいいものは当然値段も高くなる。
そんな高価なものに手を出す気はない。

相手は限られた資源である。
同じ鉱山から出たものであれば、
普通は年を追うごとに値段が上がってゆく。

かといって最初に出た時が一番安いかといえば、
そうとも限らない。
要はその鉱山の埋蔵量による訳で、
後に豊富な鉱脈を掘り当てれば途端に値崩れを起こす。
昨年出回りはじめて話題になったペンタゴン石は、
今回だいぶ値段がこなれて来ていた。
これは「楽しい鉱物図鑑」にある
カバンシ石の出てきた時と同様で、
インドや中国産の鉱物にはままありがちな現象だ。
あの辺は色々な意味で未知の土地なのである。

しかるに、よっぽどコアなコレクターでない限りは
血眼になって慌てて買い求める必要はない。
縁があればいつか手ごろで程度のよいものに巡り会える。
入手できなければ縁がなかった、それだけのことである。

そんなこんなでここ数回、
私自身は殆どウィンドウショッピングに終始している。
ぶらぶらと見て周り、たまーに掘り出し物にぶちあたれば買い求める。
特に欲しいものがあって探しに来ている訳ではない。
博物館の展示を楽しんでいるようなもので、
これはなかなか気がラクだ。
科学博物館あたりより全然品揃えも標本の質も良いし。

のんびり出かけたこともあり、
そんな凄い掘り出し物には当たらなかった。
小さい母岩つきの淡紅銀鉱と、
たまたま1点だけ見つけたモットラム石の標本。
今回の収穫はそれだけである。
それでも気持ち的には十分満足したしお腹いっぱいになった。

友達が買ったウェンドウィルソン石はちょっと羨ましかったけど。

来年は5月末になる予定とのこと。
とりあえず次は12月、池袋でお会いしましょう。


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