CANON EOS5+EF 50mm/1.4 CANON EOS5
50mm専用一眼レフ

割に血迷って買ったカメラである。

当時、私はまだ
ミノルタをメイン機材にするという決心がつかなかった。
αシステムを今ほど買い揃える前の話だ。

何つっても世間は「ニコン・キヤノン」である。
ミノルタの一眼レフなんて所詮アマチュアユース。
そんな声ばかりを耳にしていると、
「ミノルタだけで満足しているようでは
一生進歩しない」という不安に駆られたものだ。
アマチュアやん自分。何に進歩するつもりやねん。

しかし、病人にそんな道理は通らない。
検討に検討を重ねた結果購入に踏み切ったのが、
EOS3にその座を譲るまでの間、
EOS1(N)に次ぐキヤノンNo.2AF一眼として君臨した
このEOS5だったのである。

なぜEOS1にしなかったかというと、それはとっても高いからで。
キヤノン入門機に、いきなりフラッグシップに手を出すのも
ためらいがあったし、
だいいちEOS1は見てくれが好きじゃなかったのだ。
やっぱルックスなのか。
だけど結局は自分が連れ歩くものなのだから、
見てくれが気に入らないのはちと悲しい。

これは好みの問題なのだが、
EOS5の面構えというのは実に精悍である。
写真を撮る為の道具に徹した顔をしている。
これが、本機を未だに手元に置いている
一番の理由だと言ってもいい。

同時に購入したのは、28-105mmのズームであった。
単行本「さぼんどーる」の中でちょっと触れたように、
私はコイツをオールインワンカメラとして使うつもりだったのである。
だからこそ、内蔵ストロボの光量にも拘ってこれを選んだ訳で。
今でこそミノルタ807siというGN20(GN:ガイドナンバー。発光量を表す)の
大光量ストロボを内蔵したカメラが存在するが、
その当時はこのEOS5のGN13-17というのが最大であった。
光量の小さいストロボで撮った写真は、
青みがかり背景が暗く落ちる。
それが嫌で通常は外付けのストロボを使っているのだ。
どうせ内蔵モノを買うのなら、光量が大きいに越したことはない。

が、この28-105の標準ズームがクセモノであった。
28ミリ側で、かなりの歪曲収差が出るのである。
手っ取り早くいえば、真っ直ぐな筈のものが
画面周辺に行くと膨張して曲がって写ってしまうのだ。

気にしなければ大した問題ではないし、
目立たないように撮ればよいのではある。
が、一旦気にしはじめるとこれがやたらと目立つ。

これだけ書くと非常にダメなレンズのようだが、
決してそういうわけではない。
キヤノンの名誉の為に言っておくと、
レンズ性能には様々なパラメータがある。
このレンズは、歪曲収差よりも
他のパラメータの数値を上げることに重点を置いて
設計されている。そういうことなのである。

・・・が、ここでふと気付いた。
こんなズームを使っているプロカメラマンはいないのだ。
プロ用には、キヤノンは28-70mm/2.8というゴツくて重くて、
おまけに5倍以上の値段のするレンズを用意している。

ということはつまり、正式にキヤノン党員になるには
最終的にはそれら「プロ用機材」を揃えねば
埒が明かないということだったのである。
だってそうしないとキヤノンの真骨頂を味わえないのだから。

先端に赤のラインが走っていることから、
「赤ハチマキ」と通称されるキヤノンのプロ用レンズは、
いずれも目の玉が飛び出るほど高い上に
中古になっても一向に値崩れしない。

私はキヤノン党員になるのを諦めた。
EOS5の使い勝手が、見てくれの割に
イマイチだったというのもある。
背面のダイヤルにトルクがなく、
すぐに設定値が変わってしまう。
操作のレスポンスが遅い。
省電設計のためか、レリーズするごとに
ファインダー内表示が消える(これは本当に困る)。
そういう細かいところが気になって、
ここでもやっぱり私は
「ああ、EOS1じゃなきゃダメなんだ」と
思ってしまったのである。

とはいえ、フィルム給送音やシャッター音の静かさ、
静かで素早いフォーカシング(ピント合わせ)等
優れた機能も多い。

そして最後に購入した安価な単焦点レンズ・
EF50mm/1.4USMは至近距離から無限遠まで、
実に素晴しくよく写るレンズだった。
今回、9xiと8700iの写真は
EOS5にこのレンズを付けて撮っている。
ネット上では分かりにくいが、
非常に階調豊かな色再現をするレンズなのである。

現在、だからEOS5は50mm専用カメラになっている。
それにしてはボディが大きいが。
このレンズが使いたくて、時折私は
EOS5を肩にかけて外出するのだった。
CANON EOS5+EF 50mm/1.4