Nikon FA+Ai-s NIKKOR 50mm/1.4 Nikon FA
いつかは、ニコン

世の中のカメラファンを
ニコン派とキヤノン派のいずれかに分けるならば、
私はニコンに一票を投ずる。
その無骨さを愛するが故に。

ニコンのカメラには
愛想というものがなかった。

かつてライカやコンタックスが
ロレックスよろしく金満家の首にかけられ、
キヤノンやペンタックスが
庶民のちょっと贅沢な趣味、という香りを
漂わせていた時分から
ニコンはなぜか独り戦地に赴いてみたり
政治家の裏工作を暴いたりしていたのである。

ニコンのカメラは
虚飾や衒いを一切排した、
職業写真家専用の真面目で無骨な道具である。
そんな印象が、私の中には深く刻まれていた。
それゆえ、自分がニコンに手を出すなど
まったく思いも拠らなかった。
値段も高かったし。

ところが一時期、中古カメラにハマり始めた頃に、
ついうっかり思ってしまったのである。

「中古だったらおれが手を出してもいいかも・・・」

そう考えはじめると、
元来が子供の頃からの憧れのニコンである。
使ってみたいという衝動を止められるものではない。
・・・では、どのニコンを選ぶか。

その頃には既に、メインシステムはミノルタと決めていた。
だからAFシステムは候補から外す。
そうなるとMFニコンの最高峰、F3というのが自然な選択肢ではある。
しかし。

私にはF3やF4といった「一桁のF」は
プロカメラマンが使うもの、という意識が非常に強い。
なおかつ私は、
プロフェッショナルという人達は、それがいかなる分野であれ
ある程度の尊敬が払われるべきだと考えている。
あくまで専業写真家ではない私には、
いきなりF3やF4を手に入れるというような行為は
なんだか恐れ多くて出来なかったのだ。

そこで目に留まったのが、このやたらと無骨で
値段も手頃、性能的にも申し分のないFAだったのである。
最終的な決め手はやはりルックスかもしれない。
FAのフォルムは、なんだか蒸気機関車を連想させて
いかにも洒落っ気がない。
洒落っ気がないというのは、
いかにも仕事が出来そうな雰囲気を漂わせているものである。

FAを使っていてひとつ感心するのは、
ありとあらゆる操作部にロックが設けられていることだ。
うっかり裏ブタを開けたり、
感度設定を変えてしまうことのないよう
必ずロックを解除しなければ操作できないようになっている。

妙に多機能を詰め込んでしまったせいか、
殆どニコンの歴史から忘れられているFAであるが、
これもまた「あのニコン」に他ならないのである。
NIkon FA+Ai-s NIKKOR 50mm/1.4