CONTAX Tvs Vario-Sonner28-56mm/3.5-6.7 CONTAX Tvs
チタンカバーは嫌い

現在、唯一の現役ズーム付きコンパクトカメラである。

使えるズームコンパクトというのを長年探していた。
単にズーム付きということならいくらでも売っているが、
どれもこれも望遠側の開放値が暗すぎて使えやしない。
135mmでF11とかというスペックを見ると、
ISO400のフィルムを使っても、晴天の昼間でもない限り
1/125秒以上のシャッターが切れない。


つまり手ブレを防ぐ為に三脚が必要になってくるわけで、
それではコンパクトカメラの意味をなさないのだ。

そういう大事なことを、販売店の人は教えてはくれないし
メーカーもアナウンスしない。
カメラ業界の良心を疑う商品なのである。
ズームコンパクトというヤツは。

で、このTvsの望遠側56mmF6.7というのが
私的には我慢の限界だった。
また、この非常識に高いコンパクトカメラの
「カールツァイス」のレンズの写りにも興味があったのだ。
もう5年ばかし前の話である。
ところが。
いざ手にしてみると、決して使いやすいカメラではない。
必要な機能は全てちゃんと備わっているのだが、
操作のやりやすさとか、使いやすさということが
なおざりにされている感がある。

どうもコンタックスというブランドは、
カメラを使うことよりも飾ることにご執心なのではないか。
いまいち、そんな気がしなくもない。
T2に始まる総チタン製の外装からも、その辺が窺い知れる。

確かにチタンは軽いし丈夫な金属だ。
カメラの外装にチタンを用いたのはニコンF2チタンが最初だと思うが、
これは純粋にヘビーユーザーの為の外装強化策であった。
それゆえ全て黒塗りがなされており、
間違ってもチタンカラーそのままの色だったりはしなかった。

しかしT2以降のチタン外装カメラというのは、
高級感の誇示にその重きを置いているだけとしか思えない。
チタンは決して肌触りのいい金属ではない。
カメラは手のひらや顔に押し付けて使うのだ、ということを
デザイナーはどの程度考えているのであろうか。

操作部の使いにくさや重さとあいまって、
私は結局その後あまりこのカメラを使わなくなってしまった。

しかし、レンズの写りはさすがに絶品である。
但しこのレンズには独特の周辺光量落ちがあり、
画面の周りに行くに従って色が深く暗く落ちて行く。
絞ってもあまり改善されない。
従って、ちょっと「仕事に使える」とはいえないものだ。

が、作品を撮るという意味においては
これは作画上のひとつのポイントにすればよい訳で。
元来が素晴らしい解像力と色乗りをするレンズなのだ。
もったいないから使わなきゃなあ、と思いつつ月日が流れていった。
そんなある日。

写真雑誌でかのアラーキー氏が、
自分のTC-1に黒い革を貼り付けているのを見たのである。
なるほど、この手があった。
私は東急ハンズで糊付きの牛革を買ってきて、
Tvsの左手側と背面一面にぺたぺたと貼り込んでしまった。
CONTAXのロゴが隠れてしまったが、そんなもんは別に必要ない。
ついでに、くるくる回って困るダイヤル部分にも貼り付けて
固定してしまったのである。
専用のレンズフードもちゃんと買ってきて装着した。
いわば、自分用に簡単にカスタマイズしてしまった訳で。
こうなるといやがおうにも愛着がわく。

私は再びTvsを持ち歩くようになった。
絞りや露出補正の使いづらさ、
中抜けをおこしやすいAFは相変わらずだが。

メーカーである京セラは、今年になって
これをリニューアルしたTvsIIを発売した。
ちくしょーと思って見に行ったけれど、
私が使いにくいと思っている個所は
ちっとも改善されていなかった。

それともやはりこれは
使う人の為のカメラではないのだろうか。

レンズが真面目に作られているだけに、
非常にもったいない気がする。
CONTAX Tvs Vario-Sinner 28-56mm/3.5-6.7